story
□虚ろ眼
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「まさかぁ、そんな訳無いでしょ〜?」
うふふとロードは含み笑いをする。ノアじゃ無い。それなら、比喩表現で人間じゃ無いっていったのだろうか。
よかった。ロードのジョークだったんだ。
そう、ホッとしたのもつかの間。
「玲子は“アクマ”だよぉ」
「え…?」
ア、クマ?
それは、なに?
アクマって、エクソシストが破壊してきた、悲劇の産物の、アクマのこと?
その場にいたアレン、ラビ、リナリーはロードの言っている意味が分からなかった。
だって、あの玲子だぞ?
そんな事有り得る訳が無い。
そう信じられない気持ちでいっぱいだった。
「…ロード」
「なぁにぃ?ティッキー」
「それは言わないって言わなかったか?」
少し厳しい顔つきでロードに向かってそう言えば、口が滑ったと笑ってごまかした。
終いには、もう言ってしまったものは仕方がないと言っている。
そのロードとティキの会話さえ、耳に入っていないかのように微動だにしないアレンとラビ、リナリー。
「…ちょっと、待、つさ」
「ん?」
混乱しつつも、冷静を保とうと口を開いたのはラビだった。
「…下手な嘘は通用しねぇぞ」
「嘘じゃないって」
ラビの言うことに、真面目に返すティキ。アレンとリナリーは、この場の会話はラビに任せることにした。自分達は、衝撃的過ぎて頭が回転してくれなかったからだった。
「嘘さ」
「信じたくないのは分かる、けどな」
「嘘さ!」
ダンッ!と両手を拳にしてテーブルに打ち付けるラビ。食器がカチャりと音を立てた。
「嘘さ…。今まで戦ってきた俺達が何も知らないとでも思ってんのか。馬鹿にすんな!」
べつに馬鹿にはしていない。ティキは哀れむように、怒りで震えるラビの声を聞いている。
「アクマってのは…死人同然じゃねぇか…。ざけんな!!玲子がアクマなわけねぇ!嘘に決まってるさ!!」
ラビの一言にはっとするアレン達。
そうだ、今まで戦ってきたアクマはそういうもの。憐れな魂を救済するのがエクソシストの役目。そしてその役目を背負っているのは玲子も同じ。
「…玲子さんは、生きてます!アクマな訳ない…!」
「そうよ!玲子を侮辱するなんて許さない!」
「俺らは玲子を見てきた。そんな事で騙されるとでも思ってんのか!」
仲間を侮辱され、怒りを現わす。その状況をティキはため息をつきながら見ていた。
「…それ、本気で言ってる?」
「当たり前だ!」
「何の証拠も無いくせに勝手な事言わないで!」
「…その言葉、そのままそっくり返すよォ?」
何なら特別にもっと真実を教えてあげるよ、とロードは玲子に歩み寄った。
ロードは玲子の頬を優しく両手で包むと、アレン達の方を向かせた。
「ふふ。今の玲子はねぇ、
目が見えてないんだよぉ?」
「…えっ」
クスクスと笑いながら、ロードは玲子の膝の上に座った。
嘘だ。それこそ嘘だ。だって、方舟で会ったときは、そんなそぶり、してなかった…。
「―…あっ」
ラビは、神田と話していた事を思い出した。
いつものあいつだが、あいつじゃない。何か仮面の下に隠している。
ぎこちない行動や、今までとは少し違う態度は確かにあった。
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