story

□虚ろ眼
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「食事の準備OK。お出迎え準備もOKぇ〜」


アレンがもうすぐ来ると、ウキウキしているロードはとても嬉しそう。


「玲子ももう少しリラックスしなよぉ?」

『…、』

「無理だって。あんまりいじめんなよロード」


ウキウキと弾むロードとは対照的に、口数が減った玲子。そして、そんな玲子の手を取りエスコートするティキ。席に座る事を促し椅子を引く。


「…無理してメシ食わなくても良いからな?」


何処に食事の道具があるのか分からない。バレるのは嫌なんだろ?とこっそり言うティキ。
ティキは目が見えない事がバレるのを嫌がる玲子を気遣い、目隠しは無しにしてもらえた。

その気遣いは嬉しかった。


『…悪いけど、食欲無いから』


大丈夫。

それならいいよ、とティキも自分の席についた。


大丈夫。きっと、皆生きてる。遅れて来るだけだ。それなら、安心できる。今の自分は何も出来ない。

戦えるけど、戦いたくない。
何か解決策がない限り、イノセンスはおろか、体術だって使わないほうが良い。

戦いたいけど、戦えない。

そんなジレンマの中、扉が開いた。





「アッレーン!」


アレンが視界に入るやいなや、ロードはアレンに飛び付くという大歓迎ぶり。
ロードに驚くアレンはさらに驚かされる事になる。


ちゅうっ


「!!!」

「んなっ…!!?」


本人は一瞬、何が起こったのか分からなかった。
それを見ていた回りからは驚きの声が上がり、レロはそれを叱る。

事態を理解したアレンは真っ白になり呆然としている。ラビが揺さ振りをするが、それは解けなかった。

しかし、驚いているのは彼等だけではなかった。


「ロードなにお前…?少年のことそんなに好きだったの?」


ビックリしているのはティキも同じだった。


「千年公以外にちゅーしてんの初めて見たぞ」

「ティッキーにはしなぁ〜い」


上機嫌のロードはレロと一緒にクルクルと回り踊る。
そして、ティキの隣に静かに座る玲子のもとへ。


「玲子ッ…!」
「玲子さん!?」


ロードを追って視線を移せば、いつもとは違う雰囲気の玲子がそこにいた。


「ティッキーにはしないけどぉ、玲子だったらするぅ〜」

「いやダメだろ」

『…ティキ騒ぎすぎだよ。子供のチュウでしょ?』

「…言っとくけど、お前の想像してる“頬っぺにチュウ”じゃねぇよ?」

『…え?』

「キスだ、キス」


え、と驚くと、顔を真っ赤にしてうろたえる玲子。
その表情を見るティキは純情〜、と笑う。


『…そ、それは…』

「なんでぇ?女同士なんだからノーカンじゃん」

『いや、でもっ』


迫りくるロードをかわしている玲子の必死さを見てティキはもしかして、と口を開いた。


「…玲子もしかして、したことない?」


ティキの一言で顔をさらに真っ赤に染め上げる。それを見れば誰でも予想はつく。


「なんだ、無いのか」


今時珍しいな。
そう言えば、したことないけど文句でもあんのか、と開き直った反論が帰ってくる。
良いんじゃないか?ファーストキスを大事にするのも悪くは無いだろ。


「まあ、いつでも奪えるってことだな」

『ちょっ…!?』


ティキは席を外し、玲子の傍へ。顎を上向きにさせ、屈み込んで顔を近付かせる。


「景気付けにやってみるか?」

『やめっ!』

「玲子さんを離してください」


正気に戻ったアレンは、玲子に迫るティキを睨む。そのアレンの反応にニヤリとするティキ。



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