story

□血狂い
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「助ける…?」

「!」


気配無くチャオジーは扉の前に佇み、アレンの言葉に耳を疑う。


「どうして…?あいつらはアクマとグルになってオレの仲間をいっぱい殺したんスけど…?」


信じてきたアレンに裏切られた気持ちでいっぱいのチャオジーの口は、止まらない。


「あの女の人だって、アクマらしいじゃないっスか。

なのに、助ける?」


チャオジーの言葉にいち早く反応したのは、リナリー。


「違う!玲子はアクマなんかじゃない!」


ノアを助けるのは嫌かもしれない。今まで仲間の命を奪っていったのだから。
でももうあのティキ・ミックはノアではなくなった。ただの人間。
それに、



「玲子は絶対助ける。今までずっと一緒にいたんだから!」

「リナリー…」

「そうさせないために、だから助けるの…」


玲子はまだ、あの時、意識があった。助けられない訳じゃない。いつもの声で、ごめんねって、そう言ったんだ。
少しでも可能性があるなら、助けたいって思うじゃない。


「…大切な人なの…」


酷いこと言わないで。






ゾクッ



「チャオジ…ッ」


嫌な予感がして、チャオジーを突き飛ばすアレン。
下の方から伸びて来たものにアレンは捕われ、引きずり降ろされてしまった。

信じられない光景に、リナリーは崩れる。


ティキのノアは破壊したはずなのに。
引きずり降ろされたアレンは、目の前の状況を理解できなかった。


ノアのまがまがしい気を放つ、ティキ・ミックがそこにいた。
血が黒く変わるティキ。
それを合図にティキは黒い何かに飲み込まれていく。

そして、変異した。
まるで黒い鎧を着た騎手のような姿になっていた。そうなったティキに、もはや太刀打ちの術はない。一体、何が起こったというのだ。
柱にたたき付けられるアレン。そして迫るティキ。傍らに、玲子を抱えていた。

ヒュン、と風の音がティキを過ぎる。ラビがアレンを抱え、ティキの姿を見る。


「ラビ…」

「アレンしっかりしろ」


ティキにやられたアレンはボロボロ。しかも、扉まで壊されてしまった。もう外に出ることは叶わない。


「…玲子さん…が…」


我を忘れているティキの腕の中に、ぐったりとして動かない玲子。血は出て無くとも、それまでの出血が酷かった。あんなに手荒に扱われては、体に障るほかない。
どうにかしてティキの手から離さないと。



「……?!」


目を、疑った。

抱えている玲子に、ティキが、


「何して…っ!?」


首筋に、牙を向いた。


「やめっ…!」


とうとう気が狂ったか。
噛み付かれた玲子の首筋からはつ、と血が流れていく。

ティキの黒い血と、玲子の赤い血が流れていく。クロウリーのように血を吸う訳でも無く、ただ噛み付いている。

片腕に玲子を抱えながら、もう片方の手で攻撃をして来るティキ。そんな不安定な体制にも関わらず、ティキは目の前にいるアレンとラビに襲い掛かる。ラビは咄嗟に上へ逃げるが、それさえ追いつかれてしまう。ラビはティキの攻撃を防ぐが、力が及ばない。
その力で塔が崩れ落ち、さらに崩壊はひどくなる。


ティキに首を締められていたリナリーは塔の崩壊と一緒に落ちていく。
瓦礫の下敷きになるところを、チャオジーが支えて難を逃れる。だが、逃げ場がないということには変わりなかった。


『…っ…』


ティキに抱き抱えられている玲子。首筋からは痛々しい傷痕が残っている。

ティキはリナリーを庇ったアレンと戦っている。



痛い…。




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