story
□舞曲廻る
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玲子のある一部。
ダークマターの一番濃い部分を見付けるために目を懲らしてみてみた。その部分を取り除けば、玲子さんは助かるかもしれない。
アクマ化を止められる。でも、取り除くということは、また彼女を傷つけてしまう事になるのは避けられない。そしたらもう、僕は逃げる事は出来ない。
それでも、もう逃げたりしません。貴方からの罵倒でもなんでも受けるつもりです。
ただ助けたいんです。
「…!」
言われた通り、歪んだ一部を見つけた。あとは、この大剣で取り除けば玲子さんは助かる。アクマ化は止められて、これで、終わるんだ。
「……ッ!?」
『どうしたの?』
首を傾げてアレンの表情を観察する玲子。
「…出、来ない…っ」
「アレンくん?」
無理だ。
無理だ。
『アレン?アクマ化、止めてくれるんじゃなかったの?』
「…出来、ません…っ!」
無理だ。
無理だ。
そこを貫けというのか。そこを取り除けというのか。
無理だ。
無理に決まってる。
「そんな、出来るわけ、ないじゃないですか!」
…心臓を、貫くなんて…。
ダークマターの粒子が一番濃く存在している場所。そこを取り除けばアクマ化は止まる。
でも
玲子さん、貴方は、生きている。普通のアクマとは違って、生きている。生きている人の、心臓を貫けるわけない。
いくらダークマターが濃く存在している所だからといって、心臓を貫けば人は必ず、確実に死んでしまうじゃないか。
「…貴方を殺すなんて、できませんっ…」
アクマ化を止めるということは、玲子さんも、一緒に死んでしまうという事…。
いやだ。もう何も、大切なものを無くしたくはない。
『あはははは!!弱虫ね。出来ないなら最初から諦めればいいのよ!最初から貴方達に私を救うことなんて出来ないんだから』
ギィンッ!!
「…っ、玲子、さんっ」
玲子の爪は、アレンの首を狙う。寸前のところでアレンは剣で回避するが、間合いを詰められ力で押されている。剣を大きく薙ぎ払えば、空中でくるりと一回転し、優雅舞い降りる玲子。
「どうして…」
『…どうして?なら、私も聞いていい?』
十分距離をとる中、静かに声を発する。
『アレンはどうして私を傷つけたの?アクマだというだけで何が悪いの?』
ガギィンッ!
私達の存在を消すため?憐れなアクマの魂に救済をするため?
そう問いながらアレンへの攻撃は止まない。アクマが憎しみをぶつけるように、敵と見なしたものを排除しようとする目付きの玲子。
『私に救済なんて必要無いよ。だって生きてるもん。哀れでもなんでもない』
貴方の勝手な感覚で、命を取られるなんて真っ平御免だわ。
『…それに、すごく、すごく、痛かった』
「…っ!」
『アレンに付けられた傷だけじゃないよ。心もすごく痛かった!』
狂気と悲しみで歪んだ玲子の顔。それはまるで、玲子の本音を聞いているようだった。
アレンは、間合いを詰められ、刃で火花が散る中、はっとした。
怪我をしている玲子。イノセンスの力は弱まりアクマにのまれている。加えて、アレンに近づいたせいで傷が広がり、着ている白いワンピースが赤く染まりだしたのだ。
アクマの破壊衝動のせいで傷だらけの玲子は無理矢理体を動かされ、出血が酷い。
地面が、赤く染まった。
「玲子やめて!血が、血が…!」
涙を流して訴えるリナリーの声も届かない。
『煩いな。黙らないとその喉噛み付くよ?』
アレンの大剣を跳ね退け、リナリーのいるボックスへ物凄い早さで瞬間的に移動する。
『…』
そこまで来て、玲子の動きが止まった。
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