story
□舞曲廻る
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真空状態の空間に飲み込まれたアレンは体が圧迫され、イノセンスは解けてしまう。
『…ロード、何が起こってる。アレンは、無事?』
「まだ、わかんない」
「アレンくん…!」
決界を壊そうと蹴り続けるリナリー。それを制止するチャオジー。
アレンの閉じ込められていた空間がビキッとヒビが入る。そして次の瞬間、真空の空間が爆音をあげて破れた。
その空間から出てきたティキは、驚きのあまり笑うことさえ出来ずにいる。
爆煙の中、大剣を片手にアレンは姿を現す。
ドクッ
『…うっ!』
「…玲子?ヤバイなぁ」
「玲子、どうしたの…!?」
玲子は胸を押さえ倒れ込む。
「(アレンのイノセンスが強すぎるんだ…)」
玲子の傷口はまた開きかけている。
「なんでそんなに頑張んだよ?」
「あなたたちにだって…わかるはずだ」
アレンの剣を防いでいるティキだが、その盾は壊れ、体を切り付ける。だが、体は斬れていない。
アレンは、ティキの肉体を斬ったわけではない。ティキの内にある、ノアだった。
『うっ…あぐっ!』
「退魔の能力」を持つアレンの大剣。その剣は、人間を生かし魔だけを滅する。ティキは、ノアを失う苦痛に堪える。
「俺を殺さず…にノア…だけ?お前は…甘い…な!ただのお前のエゴだ…ッ」
「なんとでも。その為の重荷を背負う覚悟はできている」
「ティッキ…!」
ティキのノアが失われる、と慌ててティキのところへ駆け寄るロード。だが、ティキは手を伸ばし、ロードを止める。
「いい」
その言葉に皆、驚く。
覚悟を決めているティキ。覚悟を決めているアレン。
「この戦争から退席しろティキ・ミック!!」
『…!ダメ、アレン!!お願いやめて!!』
「…玲子さんっ?!」
なぜ、そう叫んだのか自分でも分からない。でも、ティキを貫いてはいけないと本能的にそう思った。ティキのノアを失わせてはならないと。
アレンは、なぜ止める必要があるのか。玲子の声に戸惑いながらも、その声は剣を引くには遅すぎた。アレンはティキを貫いていたからだ。
「残念だ…少…年」
悪いな、ロードと倒れるティキから、アレンは剣を引き抜いた。
ティキの額からは、聖痕が消える。
ドクッドクッドクッ
強すぎる鼓動が治まらない。
視界は真っ暗なまま。でも、何かが込み上げて来る。
「やったッス!悪魔を!敵を倒した ヒャッホォ!!!」
敵が倒れたことを喜ぶチャオジー。だが、鋭く尖った蝋燭がチャオジーの背中に襲い掛かった。
「動くな。動いたら、全員刺す」
ロードは蝋燭でリナリーのいる箱を、アレンを包囲し殺気を放つ。
「僕ね、アレンのことスキだけどぉ、家族も特別なんだぁ…。このキモチはアレンと一緒だね」
ジリ、と音を立ててみるだけでも、本当に身動き一つでもしようものなら、その蝋燭が襲い掛かってくる。そんな感じだ。
「僕ちょっとムカついてるんだよ。仲間の体に穴が開くの見たい?」
ティキを抱き抱え静かに、怒りを現していくロード。仲間を穴だらけにする、それだけじゃ足りないくらいだった。
「「ひとり」…アレンの仲間にお仕置きしちゃうんだから」
ロードは、自分の内にあるラビの存在を忘れてはいなかった。
「そいつの心メチャクチャにしてやる――!!」
「!!」
ドクッ…ドクッ…
ドクン…ッ!!
『…あ…ああ…っ』
…心臓が、壊れる。
体中を駆け巡る血が、熱くて、怖くてしかたがない。
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