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□謡われた魔術師
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ズキン、ズキンと頭が痛い。
口は自分の意志を無視し、勝手に動く。声は自分のものなのに、話しているのは自分ではない。
変な感覚だ。
「お前に言われたくねぇんだよ。ったく、こんな小娘に取り付きやがって。それでも魔術師の端くれか?」
クロスと、玲子の中にいる人物が玲子の口を借りて会話する。
『〈口煩いのも相変わらずだな〉』
くつくつと笑う。クロスはこの人物を“オド”といった。“オド”とは一体何者なのか。自分さえ知らない人物を、何故クロスが知っているのだ。
そして何故、玲子の中に居ることに気づいたのか。
…訳が、分からない。
オド?魔術師?
取り付くとは、どういうことだ。
『…説明してください』
この頭が割れるような痛みも、訳の分からない会話も、全て。
「説明、ね。お前はコイツを何処まで知ってる?」
『…知りません。あたしが知ってるのは、コイツがこの世界のカミサマだっていうことだけ』
「カミサマ?…ふっ、ははは、成る程な」
『〈…違うだろ。俺はそんなもんだって言ったんだ。勘違いするなよクロス〉』
まあ、あながち間違っちゃいないがな、とクロスは笑う。
親しげな仲のような感じがした。クロスはコイツの正体を知っていて、自分は知らない。カミサマと思っていたことも、こんなに簡単に否定されてしまった。
『…おいコラ、オドとか言ったな。…どういうことだ説明しろ』
『〈いや、いきなりキレんなよ〉』
『知る権利がこちらには有るだろ』
『〈ハイハイ…〉』
今から説明しますよ、と呑気に繋ぐ言葉にイライラした。頭が痛かったからというのもあるかもしれない。
だがそれ以上に、自分はこの人をカミサマと信じていたことを裏切られたようでショックだった。
「…だがその前に俺の質問から先に答えてもらう」
元々こちらから振った話だからなと足を組みながらクロスがいう。
「オド、お前がコイツに取り付く理由は何だ」
真剣にそう話を振るクロス。
観念したのか、オドは玲子が異世界者ということだけは伏せて話した。玲子の体質が必要だったということを。
『〈コイツは俺の力の影響を受けやすい体質だ。影響を受けやすい分、コイツ自身にかける俺の力が少なく済み、そのお陰で今世界全体を見ることが出来ている〉』
「負担する余りの力を世界に回せるってか」
『〈そういうこと〉』
成る程な、とクロスは納得したように言い、チラリと玲子を横目で見る。
「確かに、コイツの体質は特別なものだからな」
やはり、何か知っている様子だ。こちらに向けているクロスの視線は、どちらにむけて言っているのだろう。
「…なるほどな。どうりで…」
ふむ、と指を顎に当て考える。思い当たる節でもあるようだった。
それを問えば、クロスはまだ仮説としてしか言えないため、これ以上は話せないと言い口を閉ざした。
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