□謡われた魔術師
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何年も転生するノアに、何千年と生きる伯爵。そのような相手に立ち向かうは、ただの魔術師。寿命も無理して長く留めていてもいずれは限界が来る。

その限界を無くそうと、オドは一か八かの賭けに出た。

身体が朽ち果てる限界を超え、新たな術を己にかける事を決心した。
難易度の高い術は、失敗すれば同等のリスクを背負う。

則ち、死だ。

その恐怖すら忘れるほど、オドは術に専念した。
そして己に術をかけることに成功。

その術とは、「昇華融合」。

長きにわたる術を発動させながら、己の精神をこの世に融合させ、この世界と永遠に生きるという永久の術。

不可能とされたその術を成功させた事と、永遠にこの世界とありつづける事から、オドは神と称されるようになった。

しかしその術が発動した瞬間、オドは肉体を失う事になる。したがってオドは精神のみとなり、融合した大地、空、物質に存在するエネルギーや、生きとし生けるもののエネルギーを糧に千年伯爵と戦い続けた。

一人だけでは無理があった戦いも、世界から受けるエネルギーにより大きな力となっていた。

しかし、肉体を無くし精神のみとなったオドが物理的に戦えるわけもない。代理として戦う人物が必要になったのだ。

良くいえば選ばれた人物。
悪くいえばマリオネット。

オドという存在を拒絶しない精神を持ち、肉体的にも受け付けるような人物が。

オドはその人物を探した。

だが、どんなに探してもオドを拒絶しない人物はこの世界にはいなかった。

この世界の人々はオドの力に拒絶反応を起こし、強大な力のせいで内部から破壊されていく。

この世界にはオドを受け入れる器がない。
それはオドにとって絶望と同じだった。

そんな時、オドの存在を見付けた人物がいた。絶望しているオドをクロスが見付けたのだ。

オドが本当に存在するなど信じられないと驚くクロスも、次第に打ち解け、この世界をどうしたら良いか話すようになった。クロスはオドを神としてではなく、一人の魔術師として接した。


オドはクロスと話していく内に視点が変わり、この世の人物にこだわらなくても良いのだと思えるようになった。

そして考えた結果は、この世界にオドを拒絶しない人物がいないのなら、違う世界から探せば良いという事にたどり着いたのだ。


〈だから、順応性の良いお前を選んだ〉


玲子は最初から選ばれていたのだ。初めて玲子とオドが会ったとき、玲子はオドを神様かと聞いた。オドはそんなもんだといった。その言葉を玲子は信じきっていた。


〈俺は魔術師。名をオド。
千年伯爵と共にいた者だ。そしてノアの14番目も、マナも知っている。
神様でも何でもない、ただの魔術師だ。今訂正する。…すまない〉




オドの力は、どうあっても受け入れる他者がいない限り使い道には限界が有る。

人へ使う力と、世界へ使う力。

人への力は、己の力を人に宿しノアと戦う力。
世界への力は千年伯爵の魔術を制限させる為の力。

勿論伯爵は制御されていることには気付いていない。微妙な力の操作が必要だった。


この世界の人間はオドの膨大な力に耐え切れず体が先に滅んでしまう。オド自身、それほどの量の力はかけていないつもりだった。しかし、人間側はその力を異物と判断し拒絶反応を起こしてしまうのだろう。

だから異世界者の玲子を連れてきて、己が使う力を軽減させる必要があった。





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