□見破られた正体
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だが今はどうだろう。

ピリッとした空気が周囲を覆い、緊張感が漂っている。周りにいる人間は緊張で顔が強張ってさえいる。フォーの言う通り、異様な雰囲気だった。


「至急、新本部に向かって来てほしいそうだ」


至急、わざわざ呼び寄せるとなるとそれほど重要なことなのだろう。


「決まった部屋に来てほしいみたいでな、部屋までの案内はティムキャンピーがしてくれるそうだ」

『ティムキャンピーがですか?』

「ああ、詳しい事は俺達も知らされていないから分からないが、何かお前に言わなきゃいけないことがあるとか言ってたな

…クロス元帥が」

『……クロス、元帥が?』


あからさまに渋る玲子に笑うリーバー。呼び出したのはコムイのはずだが、と聞いてみたらクロスがコムイに玲子を呼び出せと言い、後は伝言ゲームの要領だという。

呼び出し人がクロス、案内がティムキャンピーとなると、何か有ると考えても良さそうだ。
その“何か”については、見当もつかないため考えても分からない。ただ、普通とは違う嫌な予感は拭い切れなかった。

行けば分かる事だ。
けれど相手がクロスとなると、嫌な予感というのは膨らみ、極力関わりたくないと思ってしまうのが正直な所だった。

それに、今回の呼び出しは異様。知りたくない事を知らされそうな気がして、何と無く嫌だと思った。


「クロス元帥っつっても変なことはしないだろ。大丈夫」

『…まあ、その辺は心配して無いんですけどね』


違う意味で行きたくない。
知りたくない事を知らされそうで嫌だ。

何と無く感じる予感ですっかり重い足取りになってしまった玲子。新本部へと繋がるゲートを潜った。


新本部へ着くや否や、ティムキャンピーがお出迎えをしてくれていた。


『ティムキャンピー、道案内よろしくね』


ティムキャンピーに道案内を頼みその後ろをついて行った。
後を着いていくにつれ、徐々に人気が無くなっていき道も薄暗くなっていく。まるで別の空間に連れていかれている感じだ。

ティムキャンピーは黙々と奥へと進み、とうとう人気も光も無い部屋の前に止まった。


『ティムキャンピー、この部屋?』


この部屋にクロス元帥がいるのだろうか。ティムキャンピーは玲子の袖を引っ張り、中に入るように促している。
そのティムキャンピーの様子から、ここなのだと確信した玲子は、軽くノックをしてノブを回した。


「…よぉ、しばらくぶりだな」

『クロス元帥…』


部屋の明かりは一つも点いていない。窓から注す光のみが部屋全体を照らし出す。
コツ、と踵が鳴る音がした。
音につられ目を上げれば、すぐそこにクロスが立っていた。


「ダークマターの調子はどうだ」

『今の所、暴走はしていません。勿論予兆もないです』


それを聞くとクロスは「そうか」と言って玲子を中に引き入れた。
クロスはボスッとソファーに深く腰掛け、足を組む。そして、隣に座るようちょいちょいと手招きをした。


『…あの話って?』

「まあ、酒の酌くらい付き合え」


それからでも遅くは無いだろうといってワイングラスを傾けた。
ワインを人に注いだことが無い小娘が、戸惑いながら注ぐ必要か疑問に思ったが、クロスは満足しているようだったので渋々引き受けた。


「そうやって戸惑う姿が良いんじゃねぇか。初々しくてたまらんな」

『…え』

「お前も飲むか?」

『未成年ですので遠慮します』

「冗談だ」




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