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□見破られた正体
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自分達だって方舟に乗りたいのにと騒ぐ新人ズとバク。いつもなら騒ぎ出す前にシィフが仲裁に入り宥めるのだが、今はそうも行かなかった。
「…月宮」
『はい?』
騒ぐ三人を無視し、シィフは玲子の元へと近寄る。心なしか少し緊張気味だった。
「目はどう…?」
アジア支部に運び込まれてきた時、玲子に視力は無かった。それに加えイノセンスの力も使え無くなっていた。だが今はどうなのだろう。
噂では視力は回復し、戦いにも復帰したと聞いた。だが、この目、この耳で確かめなければ確信は持てない。本当に大丈夫なのだろうかと、そう思ってしまう。
「…僕の指、今何本立ててるか見える?」
そういって彼女の目の前で三本の指を立てて見せると、クスクス笑ってちゃんと見えていると答えた。
『三本ですよね?ちゃんと見えてます』
「そ、う…。それなら良いんだけど」
『大丈夫ですよ。心配かけてすみません、シィフさん。でももう大丈夫です。あたしは戦えます』
いつも思う。いや、いつもというほど長くは一緒にはいないけれど、一体この子のどこからそのような意思の強さが生まれるのだろう。
自分の役目を果たすとか、周りに心配をかけないようにしたり、その意思はどこから沸いて来るのだろう。
強いことが悪い訳ではない。むしろ教団側としては良い事。でもその強い意思が裏目に出そうに思えてしまう。
「月宮、あまり無茶はしないでよ?」
『ふふ、肝に命じておきます』
多分、今の自分が言えるのはこんな事くらいだろう。大きい事も小さい事も言えない。エクソシストを支える科学班としての言葉。
彼女はそれをどう捕らえているのかは分からない。
「…月宮、旧本部から連絡だ。急ぎ戻るように、だとよ」
『…え?』
シィフと会話をしている中、フォーに無線が入ったようだ。
連絡先は旧本部。
「なんか異様だったな。連絡はコムイからだ。いつも通りの声だったがなんか様子が変だったな」
あの様子じゃ、何かトラブルがあったのかもしれない。無線越しのコムイの声は妙に固かった。新本部で何かあったのだろう。急いで戻らせ方がいいかもしれないな。
新本部といえば、今頃アレン達がゲートを繋ぎ終わった頃だろうか。そんなタイミングでの帰還命令とは、何だか嫌な予感がしてならない。
「えー?もう行っちゃうんですか?」
『すみません。出来たらもう少しお話していきたいんですけど…』
「まあ、命令なら仕方ねぇよ。暇な時にでも来いよ?」
『はい、また来ますね!』
こんなに早く帰還命令が来るとは思っていなかった。しかもフォーの言い方からすると、不穏な空気らしいということが考えられる。何となく嫌な予感を抱きながら、少しの間しかいられなかったアジア支部を後にした。
アジア支部から戻り、引越しの準備が大方終わった旧本部に戻る。
『只今アジア支部から戻りました』
帰還命令が入り直ぐに方舟へ乗り込んだ玲子。旧本部は引っ越し準備がほとんど終わり、明日にはこの本部を去り新しい本部に移る。数年もの間世話になったこの本部を去ることは、なんだか寂しく感じる。
「お疲れ。その、帰還命令は新本部にいる室長からだ」
ざわついている所に足を運んで見れば、新本部と旧本部が繋がった方舟のゲート。
そこは玲子がアジア支部に行く前、ゲートが繋がるのを楽しみに興味津々、ドキドキワクワクしながら順番待ちをしている科学班員達の姿があった場所。嬉しそうに方舟に入りたがる科学班の姿は、玲子にとって微笑ましい事だった。
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