□見破られた正体
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『あ、シィフさん!李佳さんに蝋花さんも!』

「…あ!月宮さんじゃないですか!」

「おお、久しぶりじゃん!」


その振り返る姿を後ろから玲子と判別するとフォーが飛び出して行った事さえ忘れ、再会を喜ぶ新米ズ。
…ただ一人を除いては。


「何だよシィフ。感激の余り声も出ねぇのか?」


フォーの言葉に驚き、そして玲子を確実に視界へ入れると更に硬直するシィフ。何故此処に居るのだという思いや、また会えて嬉しい感情やらで、なんと声を出せば良いのかさえ分からなくなっていた。

その余りにも反応を出せずあたふたしているシィフを茶化す李佳に、けらけらと笑う蝋花。茶化すなといつも三人の中でも一番冷静なあのシィフが照れている。

シィフにはニヤニヤしながら口元を手で隠してからかってはいるが、実は李佳は李佳なりに、元気になった玲子を見て喜んでいた。


「良かったな!」


嬉しさの余り少しの照れが現れるが、それを隠そうとせず有りのまま表現する李佳は歯を見せてニカリと笑っていた。


『はい…っ!』


自分より背の低い玲子はうんと顔を上げて満面の笑みを李佳に向けた。


「(おわ…っ)」


突然の不意打ちな笑みに李佳は顔が近い訳でもないのに、何故か照れ臭くなる。可愛い妹が出来たような感じだ。

ぐしゃぐしゃと豪快に頭を撫でてやると、その伝わる力と同じ方向に玲子の頭がグラングランと揺れる。目が回るのでやめてくれと頼む玲子がまた可愛かったので、李佳はお兄ちゃん風を吹かせてこれくらい我慢しろと更に頭をぐしゃぐしゃにしてと構った。


「それより、どうして遠い所からわざわざ?」


もうやめてあげなよと苦笑しながら二人の間に入る蝋花。しかし、あまりにもひどくボサボサにされた玲子の頭を見ると、その苦笑は怒鳴り声へと変わってしまった。


「ああ、もうっ!こんなに頭ぐしゃぐしゃにして!梳かすの大変なんだよ!」

「悪ィ悪ィ、ついな」


女の子だから頭をぐしゃぐしゃにされるの嫌だという気持ちがよく分かるのだろう。いじられ過ぎた髪を見て「まったくもう…」と零す。


「…で、話戻すけど何でここに来たんですか?」

『あ、えっと、お世話になったのでお礼を言いたくて。今日やっと許可が出たので来ちゃいました。元々本部とアジア支部は方舟で繋げてありましたから、すぐに来れたんですが中々時間が見つからなくて…』

「そうなんですか。…そ、そういえばウォーカーさんは?」


どこか期待混じりな視線を蝋花から送られ苦笑する。世話になったのはアレンと玲子。もしかしたら何処かにアレンがいるのでは、と少なからず蝋花は期待していたのだ。

そのアレンは今、各地のゲートを繋げるため人より一足先に新本部へ向かっていた。そのため玲子とは別行動となり、このアジア支部には来ていない。

その事を伝えると、蝋花はあからさまに肩を落としガッカリとした。


『そんなに落ち込まないでください。ゲートが繋がれば何時だって会えるようになるんですから、ね?』


全部繋がれば、これからは時間をかけずに移動が出来る。とバクに笑いかける。バクはそれに激しく同意し、首を縦に振る。
ただし、科学班は支部長のバクほど自由に方舟に乗れる訳でもないのでブーイングは絶えない。


「もちろんだ。これを使わない訳にいかないからな」

「支部長ばっかりズルイですよ!」


そんな部下ほったらかしのバクの嬉しそうに輝かせて言う姿はまるで子供のようだった。





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