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□見破られた正体
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玲子に会いたがっていたのは事実。だがそれはバクだけではなかった。さあ行くかと、玲子会えないかと心待ちにしている者達の元へ足を進めた。
「――月宮?」
背後から声をかけられ、振り返る。バクも一緒になって後ろを振り向けば、そこにはフォーの姿があった。
どうしたのだとバクが問えば、懐かしい気配を感じて追ってきたとの事だ。
そして、やっぱりお前だったかと嬉しそうに言うフォーの後ろに、息を切らせてやって来る三人がいた。
「フ、フォーさん!どこ行くんですか」
「にっ…、荷物運んでる途中っすよ?」
「急に走り出すのやめてくださいよ」
ぐちぐちと文句を垂れる遥か後方にいる三人組。フォーはそれを全く気にしていない。それどころか更に無視を貫き玲子へと駆け寄った。
「月宮!」
『フォーさん?』
名を呼ばれ、声を聞き、そして自分の特訓を見てくれていた人を思い出す玲子。お互い駆け寄り、感動の再開を果たす。
「月宮ーー!!」
『げ…っ!?』
フォーは抱き着こうと大きく広げた両腕を刃に変えて、玲子に襲い掛かった。
当然の事ながら、その大きな鎌の形をした腕を見れば、逃げたくなるというものだ。その腕を見た瞬間玲子は逃げの体制を作った。
そして後方から追いついて来る三人組は、まだ確認できていない姿に驚いていた。
フォーがあのような腕を振り上げて襲い掛かるということは、もしやまた敵に侵入を許してしまったのではないか、とひやりとしたのだ。
ぶお、と大きく振り上げられた腕を素早く振り下ろす。地面をえぐる激しい物音が辺りに響き渡り、床の破片が派手に飛び散る。
こうなる事を予め予想していたのか、フォーは一人怪しく笑みを浮かべていた。
「…流石」
『…あ、相変わらず激しいですね、フォーさんは』
フォーはただ楽しげに、玲子は苦笑を浮かべて立っていた。ただ、二人はお互いに顔を見合わせて笑ってはいなかった。なぜなら互いに背を向け合い、再会したからだ。
「やっぱ目が見えてると反応早いな。それが本当のお前か」
『…確かめるために襲い掛かるのはやめてくださいよ…』
心臓に悪いと零しつつも、やはり久々の再会が嬉しいのか口元には笑みが浮かんでいた。
方舟に乗る前は視力がなく反応を早くするためにフォーとよく修業した。日々伸びていく玲子に驚きながらも、フォーもその成長の早さを楽しんでいた。
お互いに拳を合わせた相手だからこそ今の状況は嬉しいものだった。背中越しに伝わって来る人の熱。それを感じてフォーは目をつむる。そして実感した。
ああ、こいつはちゃんと生きてるんだな、と。
目が見えているのかを確かめようと仕掛ければ、修業していた時よりも早い反応でその攻撃を回避した玲子。
くるりと振り返れば玲子も同じように振り返り、ここでようやく顔を見合わせて笑った。
玲子の笑顔を見て、フォーは胸がくすぐったくなった。
やはり、目が見えていると笑顔も一段と違う。
そして、後ろから息を切らして追いついて来る新米科学班三人を視野内に留めると、にやりと怪しげな笑みを浮かべて、見遣る。
「やっぱ月宮の笑顔は格別だぜ。…なぁ、シィフ?」
「…えっ?」
くるりと振り返ればそこにはこのアジア支部で大変世話になった三人組がヘロヘロになりながら走って来る姿をとらえた。
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