□続・騒動事件
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「何で玲子さんがあんな姿に!?」

「科学班は何やってんさ!」

「いや、俺らはあんなの作ったことないよ」

「…あんな非常識なのを作るのは、一人しかいない」

「そういえば、なーんか怪しいの造ってて取り上げた記憶ある…。あの巻き毛…っ!」


ジョニーが言った言葉に何か思い当たる節でもあったのか、リーバーは考え込む。


「……あ」


そして思い出した。何故玲子があんな姿になったのか。それが分かったのに気付いたのか、ラビは聞き、リーバーは解説し始めた。


これは昔、コムイが玲子を男化させる目的で作ったものだという。

その理由とは極めて単純。リナリーに変な虫がつかないよう、防虫剤として作ったのだ。
リナリーに変な男が付き纏うなど、コムイは堪えられない。リナリーにある特定の男が側に居れば、そんな変な虫は寄りつかないだろう。
しかし、「特定の」という事は少なからず親密な関係であると言うことであり、それこそ堪えられない事だ。

コムイにとってリナリーは全てだ。他の男にくれてやるつもりなど毛頭ない。変な虫を近づく事すら許されない。
しかし、自分の見えない所で言い寄る男がいるかもしれない。そんな時、誰が代わりに害虫からリナリーを守ってくれるだろうか。

その理由として作り上げられた。




玲子が男だったらあるいは…、と考えコムイらしくない結論に至ったのだ。


リナリーの男避けとして玲子が男になり側に居れば、余計なものは寄り付かない。見た目は男でも、中身が女の子であれば問題はないはず!

…と、無茶苦茶な結論にたどり着いた末、この男化ドリンクが出来たという。


しかしそんな物を使用するわけにもいかず、血迷ったコムイを抑え回収しどこかへ隠したという。
それからはもう出てこないと思っていたため、その存在は忘れられていた。

はずだったのだ。




「…ってことは、さっきリナリーに着いて行った兄ちゃんって」

「紛れも無い、玲子だと思う…」

「「えええぇぇえぇ!!?」」


「なんとかして早く治らないんですか?!」

「…無理だ。あれは室長が作ったもんだから俺らにはどうしようもないんだ」


一斉に視線は玲子に。


「じ、じゃあ、どれくらい経てば戻るんさ?」

「分からん。効力が切れるまでは元には戻れないってのは確実だな」





それからというもの、燃え尽きたかのように真っ白になった玲子。
しかし、手だけはちゃんと動かし手伝いはする玲子。黙々と作業を進める玲子に、まわりは哀れみの目を向けていた。


そしてまた騒ぎが一つ増える。ボムッと爆発音が響いた。


「ゲッ、またやった!!」


リーバーがそう言い、皆の視線が煙の上がる所に向けられる。そこにはニャーとしか喋れなくなっているリナリーとブックマンがいた。
それを見たミランダは取り乱し、自らも猫になって詫びると言うが、周りからそれは阻止される。


「ちっ、これコムイにバレたらヤベェぞ…」

「ニャー」

「問答無用っスよ、殺される!!」

「おい、これ作ったの誰だ!!」


明らかに取り乱す科学班。もういやだとアレンはうんざりとしていた。
そんなバタバタと騒がしくなっている全体を静かに見ていた玲子が一言。



『いいじゃん。可愛いよ?』



その一言にざわっとする一同。
リナリーにストレートに可愛いって言うなんて、誰だアイツ、などと言う視線が向けられていた。
勿論その男が玲子だと分かっている面々はざわつくことはなかった。が、違う意味で警告をする。


「玲子、コムイの前ではそういう事言っちゃダメさ!」

『え、何で』

「今の玲子さんは男の人になってしまってるんですよ?何も知らないコムイさんが聞いてたらきっと…」

『…チェーンソー取り出しそうだね』


鮮明にイメージ出来るのが凄い。玲子は乾いた笑いをし、ため息。

…早く元に戻りたい。

切実にそう思っていた。




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