□続・騒動事件
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悲鳴を上げ続ける玲子に、少なくとも核心得たような視線が向けられる。


「(怖がりだ。しかも相当の…)」

『うあああっ!そんな目で見んなー!そうだよ怖がりだよ何か文句あんのかよー!!』


先程の姿とはまるで別人のようにめそめそとしながら大の苦手なものを大暴露する。周囲からは意外だという視線が送られるが、その姿が男なものだから笑うに笑えない。


「言ってくれればよかったのに…」

『言えるかよ!特にコムイさんにばれたら弱みを活かしてここぞとばかりに実験体にされそうでやだったんだよ!』

「そ、そんなことしないよ」

『じゃあ何で目ぇ反らすんだバカ!嘘つき変態メガネぇーー!!』


最早自分を見失っている玲子。もういっそ気絶したいくらいだった。


〈…お前はあ゙の時の゙〉

『へ?………………あああ?!』


リーバーに取り付いた謎の正体。何やら自分の事を知っているようで恐々と見てみたら、どこか見たことのあるような気がした。


『お前、あの時の…!』


それは丁度、玲子がティェドールとの約束を果たそうと墓場に来た時の事。ふわふわの髪で顔がよく見えなかった。お墓参りをしていた時に出会って消えた、謎の女の子。
…そして、あのドリンクを渡した張本人。


『どういうつもりだよ!』

〈…別に意味はな゙い〉

『はぁあああ!?ふざけん…』

〈ただお前に取り付こうと思っただけだ〉

『いやだぁぁあああッ!!』


恐怖に負けてテンションが異様に高い玲子。半ベソになりながら叫ぶ。


〈…話を戻すぞ、室長〉
「だからね、無理だってば。何度も言うけどそういう事は上の人に言ってちょうだい」


部下が首にナイフを突き付けているにもかかわらず、あくまでも自分のスタイルを貫くコムイに諦めの涙が滲むリーバー。

玲子は取り付かれているリーバーが恐ろしくて直視できず、完全に目を閉じてしまった。


『取り付かれて死んでも化けて出てこないでくださいね、名無阿弥陀仏…』

「勝手に殺すなっ!」

「…玲子ちゃん完全に壊れてるね…」


何時も通りに飄々とした態度でキッパリというコムイに、目にも写したくないと言って固く目を閉じる玲子。
それは予めその娘が予想していたのだろうか、ただ言ってみただけだと言い、首に宛がっていたナイフを手放した。


〈お前も、出てい゙くんだな…〉


自分は此処から動けない、と女の子は語りだした。
女の子は昔、突然連れてこられ、そして地獄の日々を送っていた。体を実験体として扱われ、来る日も来る日も体をボロボロにされ、そんな孤独の中、一人息絶えた。

教団が使徒を作る幻想に取りつかれ普通の人間に行った愚行。適合者の血縁者というだけで、どれくらいの人が犠牲になったのだろう。

もうずっと昔の事だから、自分の名前さえ彼女は覚えていない。


〈お前も゙私と同じだったの゙に…〉

『え…』

〈お前だって、実験体にざれる可能性があるのに゙〉



確かに、この女の子の言うことは当たっていた。
教団にとって未知な存在の玲子。何故ノアの血を受け付けるのか、アクマが従うのか、その根拠は一体何処にあるのか。探りを入れるために実験体として扱われてもおかしくは無い。

玲子にとっても人事ではなかったのだ。



「…もう、そういうのやめよう」

『コム…』

「犠牲じゃない。助け合うんだ」


教団の行った実験は消えることのない事実。だから何を言っても許される事ではない。
ただ、そんな愚かなことをしたからこそ、今はエクソシストに頼るだけで無く、互いに支えられるようになりたいと考えている。


「そんな実験、もうさせないよ」


犠牲とか、そういうものを出すために教団がある訳じゃない。


「僕らは助け合うためにある。実験なんてそんな事させないよ」


この言葉は、リナリーは勿論、玲子に聞かせるようにはっきりとそう言った。


その瞬間、ずるりと女の子がリーバーから離れた。迷うことなくリナリーへと向かい、幸せそうだと羨む。自分も幸せになれたはずなのに、何が違って命を落とした?




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