2
□続・騒動事件
5ページ/8ページ
この元凶であるウイルスの抗体を作るには、抗原を見つけなければ話にならない。
しかし、その抗原を見付けるには何の手掛かりも無く、ただ勘に頼るしかないという。その抗体は作っておらず、まったく以って無責任極まりないコムイに殴り掛かりたくなる衝動を必死に抑える一同。(一部除く)
当の本人は全くと言っていいほど反省の色が見えない。いつものコムイであればそうなる
……はずだった。
『まったく…理不尽な話だな。外のゾンビ達は抗体があれば元に戻る。でも俺のは効力が切れないと元に戻らないし、それがいつかも分からない。
……どうしてくれんだよ』
「ス…スミマセン…ッ!」
男化して性格まで変わってしまったのか、レディーファーストな姿勢はいつもとは変わらない玲子だが、男(コムイ)に対しては冷徹に豹変するようになってしまった。
それを証明するかのように今、玲子はコムイを足蹴にしている。クナイの洗礼を受けたコムイは傷口を包帯ぐるぐるに巻かれ、息苦しそうにしているのにも関わらず、だ。
『治らなかったらアンタの目の前でリナリーを口説き落としてやるからな。リナリーが俺に堕ちるのを指をくわえ見てるといい………ククククッ』
「いやだぁぁぁあああっ!!」
泣き喚くコムイを足蹴にしながら見下し、あの玲子からは想像もつかないであろう鬼畜でドSな笑みを浮かべていた。
「…き、鬼畜さ…」
「性格が…あの優しい玲子さんが…師匠見たいに…っ!」
豹変しすぎたその姿に、誰もが口を挟むことが出来なかった。
「リ、リナリーだけは…リナリーはぁぁあああ!!!」
『だったら早く治さねぇとなぁ?ククク』
「誰か…誰か助けてぇーーー!!やだよぅ!こんな玲子ちゃんやだよぉぉおうっ!」
『テメェがしたんだろうが』
コムイの叫び声とは対照的に、ひどく楽しそうな玲子の笑い声に、つい耳を塞ぎたくなる。
玲子が男だったらこんな風になっていたのかと思うと、本当に女の子で良かったと改めて思った一瞬だった。
そして
「わるいこはーいねがーー!!」
「わわっ!」
『チィッ!何だ!?』
「天の助けだーーっ!」
突如窓をぶち破り派手な音を立ててやって来る謎の訪問者。アレンはそれをまともに受け、玲子も避けるためにコムイへの制裁を中断しなければならなかった。誰もがギョッとする事態にコムイただ一人は助けられたと喜んだ。
だが、その喜びもつかの間。
元帥がウイルスに侵されていたと知ると、夢も希望もなくなった。暴走する元帥達は次々と仲間を襲い、またイノセンスを持たないエクソシストは成す術も無い。仕方なくEXの力を借りざるを得なかった。
しかし悲しいかな、EXは加減というものを知らなかった。内蔵されたミサイルをすべて打ち放つと、皆爆発に巻き込まれ暫く気を失うことになった。
――――――…。
『…うっ』
コムリンEXの有り得ない仁義なきミサイル発射をくらい、少しの間気を失っていた玲子。
薄ぼんやりとした室内。ぼんやりとした頭。徐々に覚醒していく意識と息苦しさに目を覚まし、辺りの様子を伺う。小さくだが話し声も聞こえてきた。
完全に覚醒した意識で目にしたものは首元にナイフを宛がっているリーバーの姿だった。
その様子にギョッとし、何をしているのだと目を疑った。だがそれと同時に見てはならないものを見てしまい、心臓が飛び出るのでは無いかと思うくらい大きく跳ねた。
そして絶叫する。
『いっ…ぎゃああああああ!!』
その叫び声に誰もが驚き、そして目が覚めたのかと安堵する。
一方玲子はというと、回りの声掛けに反応する余裕さえ無くなっていた。見間違いだと何度も思いたかった。この世で一番苦手なものを一番に目にしてしまったから。
落ち着けと宥められるが、それすら出来ない。目尻にうっすらと涙が滲んできた。
「…まさか、玲子ちゃん怖がり?」
『なっ、ち、違っ』
「話の腰を折るな゙…」
『いぎゃああああ!!喋ったあああ!!』
.