□続・騒動事件
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リナリーが玲子に銃口を向けさせないように前に立ち塞がり、この人は玲子だというが猫語では理解されることはなかった。


「り、リナリー…。もう毒牙にっ!?ええい貴様!許すまじ!!」


きぃー!とハンカチを悔しそうにくわえだすコムイ。じだんだを踏むその姿は、決して大人とは言えない。


「EX!リナリーを避けて撃っちゃいなさい!」

「イ〜エーックス」

「ニャー!(ダメ!)」


立ち塞がるリナリーもものともせず銃口を向けていられるのは、改良版のEXだからこそなのだろう。玲子を撃とうとする姿勢は変わらなかった。

この状況に思わずため息。


『リナリー、いい、下がって。危ないから』

「ニャー…(でも…)」


どいたら玲子が危ないじゃないか、という目を送る。リナリーのその目に気付いた玲子は「大丈夫だから」と微笑んで見せた。
そう言われ、しゅんとしながらリナリーは下がる。この光景を見たコムイは凍り付き、腕をわななかせていた。
何、この従順さ。何で素直に言うことを聞くんだ?!


「リナリー、まさか、もう骨抜きにされちゃったの…?
…こんな男に!?」


鎖で縛られている玲子を思いっ切り指差すコムイ。


「有り得ない、許さない、僕のリナリーをー!!!」


ガシャコンッ!と額に銃口を突き付けられる。勢い余って額に銃口が掠めた。


『…学ばないね、コムイさん』

「なにおう!?」


君に一体何が分かるというんだ。そう叫ぶコムイ。



『この俺様に銃口突き付けるなんざ、百億光年早いんだよ』



くくっ、と喉の奥で笑ったその瞬間、ジャラリと音を立てて鎖が解け落ちた。
力任せに引きちぎった訳ではないその鎖に驚きを隠せない。


「何者!」

『当ててみなよ』


ふっと笑い少し俯き加減になる玲子。声色は1トーン下がっていた。この瞬間、誰もが悟った。



「「「(あーあ、怒らせた)」」」


知らないっと。
後は我関せずといった風に、アレン達はそっぽを向いた。コムイはコムイで、挑発的な相手と見てギリギリと歯を鳴らす。


「当てろだって?そんなの分かる訳無いでしょ!君とは初対面のはずだよ!」

『…さて、これを見てもそういってられるかな?』


何を言うのだと憤慨していうコムイに、玲子は何処から取り出したのか、キラリと光る黒いものを見せ付けた。コムイはその手に握られているものを視覚的に理解する。そして次にはソレの所有者が誰であるか、という事がも理解出来てしまった。


「…あ、ははははは……」


コムイは、ソレを所有してそこにいる人が誰だか分かってしまい、ザッと一瞬にして青ざめた。そして自分は今かなりピンチであり、逃げられないということも分かってしまった。


『ああ、流石コムイさん。もう分かったんですか』

「ま、まあね〜…」


コムイはこの状況をどう和らげようか思考を巡らす。しかし玲子の顔を見て、回避可能かどうかといわれたら、無理かもしれないと思った。口はニッコリと弧を描いている。それなのに目はちっとも笑っていない。寧ろ睨みつけている。


『…それなら、この責任の取り方も理解しているはずですよね?』


そう言ってギラリと光る手元のソレ。
まさか、ソレを投げるなんて言わないよね?危ないよね?だって君にソレを持たせなら百発百中だって知ってるよ?そんな手にいっぱい持ってどうする気?
この状況を打破する手はないのだろうか。


「お、落ち着いて!話し合おう!まずはソレを捨てて…」

『シャラップ、でしたっけ』


聞き覚えのある台詞。それは先程コムイが言った言葉だった。


『天誅』

「ぎゃああああああ!!お助けーーー!」


これはきっと回避出来ないだろう。助けを求めても「自業自得」と言われるだけだった。
そして、その言葉通りコムイは玲子のクナイの洗礼を受けることとなる。




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