□続・騒動事件
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科学班が作るものなど、ちょっとした変化しか現れないのだから可愛いものだと思う。ジョニーは笑いながらコムイみたいなヤバイのは流石に作らないという。

…確かに。子供化するのは別として、うさ耳が生えるとか、髪が伸びるとか、猫語とか可愛いものだと思う。

性別が変わるってどうよ。

確かに自然界では生態系云々で雄の雌化とかはある。元々が雄でも、雌に変わる魚とか、そういう生物はいる。

でもそれって特定の生物でしょ?
人間がなるなんて聞いたこと無い。生物の法則を無視しすぎな今回のドリンク。

ちょっと、理不尽過ぎやしないか?


『リナリーの男除けとして、俺が男になって…、一人称は俺になって…、俺の人権は完全無視…』


いや、確かに分からなくもないよ。自分の目の届かない所ってあるからね。心配なのは分かる。

でもこれは間違いでしょ。

この体で、どう生活しろというのだ。




『…どうしよう』

「ニャー?(どうしたの?)」

『どうしよう…。どうしたらいい?』

「ニャ、ニャー(どうしたの?落ち着いて)」

『うわーー!?リナリーどうしよう!この体でお風呂とか、トイレとか、その他諸々…
どうしたらいい?!どうしたらいいんだよーー!!』



頭を抱えて悩みを叫び出す玲子。その言葉を理解したリナリー。
いつ元に戻れるか分からないというリーバーの言葉を思い出し、サーッと青ざめる玲子とリナリー。


これは大問題である。
人生最大のピンチを迎えているに違いない。


「何でさ?何でそうピンチになってんさ」

『わかんないの?信じられん…。ラビは自分が女の体になったらどうすんだよ』



「……………あ、

…いや、そのっ!」

『ソレと同じだ』


すみません、と顔を真っ赤にして大人しくなるラビ。何も言い返せなかったのだろう。
傍らでは、アレンがジョニーにまだ何かあるのかと詰め寄っていた。

その時だ。
ふっと教団の明かりが消え、辺りは暗闇に包まれた。そして何処からともなく聞こえて来る謎の笑い声。



『(……これは、まさか…)』
「おっおっおっおばけ…っ!?」
「「まさか」」


四人の思考が一致した瞬間だった。何処から聞こえるか分からない声に、嫌でもそちらの方に考えてしまう。
それと同時に、まさかそんな事がある訳無いと否定したくなる。
だが、マリはそうさせてくれない。

玲子は知らず知らずの内にミランダの袖を摘んでいた。くんっと引っ張られる感覚に気付いたミランダは袖を見る。


「…玲子ちゃん?」


暗くてよく見えないが、心なしかぎこちない様子に見えた。


「玲子ちゃん、怖いの?」

『えっあ、いや!そんな訳無いじゃ無いですか何でもないです気にしないでください!!』

口を休めることなくスラスラと言葉を並べると、無意識に摘んでいた手を離した。
男の格好をしている今の自分が女の人であるミランダに縋るなんて、端から見たら気持ち悪い光景だ。
慌てて弁解をして話を終わらせたが、隣にいたマリにはくすりと笑われていた。心音まで聞き取れるマリの前では嘘などついた所で無意味なのだ。

それを知った玲子は赤面し、笑わないでくださいと拗ねて俯く。


「ああ、すまないな」


そう笑って終わらせた。

玲子がそういう類のものが苦手だと知っていたラビは、強がっちゃって、と一人笑っていた。



それにしても止まない笑い声。
音を探るマリはそれに加えて別の音も感知し、ドアの方を向く。ゆっくりと開かれるドアから姿を現した人物に、最初に気付いたのはアレンだった。


「ふ、婦長?」


こんな暗闇の中よく見えたなと感心を抱くジョニー。修業時代の節約生活のため夜目がきくようになったとか。

しかし次の瞬間、婦長はアレンの左腕に噛み付いていた。

何が起こったのか分からず、原因は何かと考えるが分からない。




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