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□変化して
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ルル=ベルとレベル4に教団が襲撃され、機能をを停止した黒の教団。ノアの血を入れられた玲子はアクマ化し、クロスにより処刑され、葬儀まで行われた。
だが、それはクロスの計算のうちであり、玲子は仮死状態にあるだけだった。
ノアの血やダークマターは、クロスの魔術により抑制されたのだ。
その魔術で抑制されているお陰で玲子は再び光を取り戻した。それと同時に、イノセンスの力も取り戻した。
全てはクロスが魔術を施してくれたお陰。その礼をまだまともに言っていない事に気付いた玲子は、クロスが居るであろう所を探して回っていた。
そして見つけた。
ティムキャンピーを連れて教団内を散歩中(?)の人影を。
『クロス元帥!』
その背中を見つけ駆け寄る玲子。
クロスは足を止め、振り返る。
「お前か」
玲子の姿を確認すると、何か用かと言葉を発する。玲子はそれに笑顔を向けて大切な用事だと答えた。
「手短にな」
『えっ、あ、はい!その、ありがとうございました!』
クロスに礼を言う。
これを以って玲子の任務は完了した。だが、いくら手短にといったからとはいえ、言葉が足りなさ過ぎた玲子にクロスは首を傾げる。
「…主語を入れろ。意図が掴めん」
『…あ、すみません…』
玲子は早く感謝の言葉を伝えたいという思いから、結論から言ってしまった。
訂正しようとアワアワしていると、ぽす、と頭に温かい感触が伝わってきた。その感触の元を見上げると、そこにはクロスが居る訳で。当然の事ながら視界にはクロスが入る。
「落ち着け。俺は逃げん」
そう言って微笑を浮かべているクロス。
『(わ…)』
玲子はその笑みを見た途端、ぽかんと、口を開けて驚いていた。
いつもアレンから聞くクロスの行動は酷いもので、弟子のアレンの苦労は絶えなかったという。アレン自身、ウチの師匠は悪魔だ何だと嘆いていたくらいだ。
そのイメージから、きっと厳しい人なのだろうなと思っていた。
だが、それは違う。
今のクロスの表情を見れば、それは嘘だと言えるだろう。
目の前に居るクロスは、柔らかい表情をしてこちらを見ていたから。
「何だ?見惚れてんのか?」
『えっ!?』
「冗談だ」
ニヤリと怪しく笑うと、先程までの優しい雰囲気は何処かに行ってしまった。ゾゾッと背筋に寒気が走る。
そんな様子の玲子など気にもとめず、クロスは「主語を入れてきちんと話せ」という態勢を崩さない。
『えと、ノアの血を抑えてくださってありがとうございます』
「ああ、気にするな」
『そ、それから』
玲子は自分が言いたかった言葉を探しながら、頭の違う所で違う事を考えていた。
何だろう。
クロスと目を合わせられない。
自分より遥かに背の高いクロス。ただ、見上げるのが困難だという訳ではない。教団にはコムイがいる。クロスもコムイも似たような背丈。
コムイと会話をしなれているのだから、首が辛いという訳じゃない。
降り注ぐ視線に縮こまる玲子。
目が合わせられない。
目を合わせると、変に心臓がドキドキする。
これは―…
『(あたし気圧されてる)』
冷や汗をダラダラ流しながらたどり着いた結論。
目が、視線が鋭い!
アレンの言ってた事がちょっと分かったような気がする!蛇に睨まれた蛙ってこの事?
これは早めに事を済まして退散した方が身のためかもしれない。
『ク、クロス元帥!』
「なんだ。まだ何かあんのか」
用件なら早くしろと言ったはずだが。と、呆れ顔で言った。
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