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□変化して
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「(まあ、神田くんは神田くんなりに考えていることだろうから、僕がどうこう言う筋合いはない、か…)」
余計な口を挟めば、「自分の事を先に解決してから言え」とか、こちらがギクリとするような事をズバッと言ってきそうだし…。余計な事は言わないほうが吉、かもしれないな。
玲子ちゃんには余計なことを言ってしまったみたいだけど、大丈夫だろうか。
そう思って視線を向けてみると、心当たりが見当たらず彼女はうんうんと唸っていて思わず笑いが込み上げてきてしまった。
「喧嘩じゃないみたいでよかったよ。僕が言った事はあまり深く考えなくていいよ。神田くんも疲れてるんだと思うしね」
『そう…かな…』
あまり納得はしていないようだけど、でもまあ、なんとかなりそうだね。
コムイは自分の問題と、気になっていた問題の二つはそう簡単には解決するものじゃないと言うことを結論付けた。
「そうだ、玲子ちゃんちょっとここで待っててくれないかい?僕まだ仕事があって、見送りに行かなきゃいけないんだ」
話の一段落ついた所で、コムイは次なる仕事へ移ろうとしていた。
『何処へ行くんですか?』
「地下水路。クロス元帥を見送りにだよ」
『あ、わかりました』
先ほど廊下で会ったのはその移動中だったのだろう。クロスはルベリエと共に中央へ今日発たなければならなかったのだ。ただ大人しく連れていかれたらの話。
いつ脱走するか気がきじゃない。
「後で指令室に皆集めるから、ソファーに座っててよ。イノセンスの話もしなくちゃいけないからさ」
玲子に迫ったあのクロスにまた会いに行くのは気が進まないが、発つ所を見なければ安心も出来ない。仕方無しにそれじゃあ、と言うコムイは地下水路へと向かって行ってしまった。
そして一人、玲子は指令室にポツンと残された。
「室長ー、用事ってなんスか」
今出て行ったコムイを追ように、誰かがやって来た。何の前触れもなくその部屋に入って来た人。言い方からして、あらかじめコムイがここへ呼び付けていたようだ。
だが、コムイはクロスが無事発つかどうかが気になりすぎて、呼び付けていた事をすっかり忘れてしまっていた。
『あ、コムイさんなら地下水路に…』
今さっき出て行った事を伝えようと、声のした方を向く玲子。
「『…あ』」
ばっちりと三秒間目が合っていた。
レベル4襲撃時は目が見えていなかったし、音だけで判別していた。だから人の顔やその表情は分からなかった。でも、今の自分はしっかりと目で見ることが出来る。
久々に見る顔。
リーバーだった。
突然の訪問者に驚きつつ、その後もお互い動かずフリーズした状態が続く。人を呼んでおいてどこに行ったか分からない室長。何で玲子がここに居るんだという疑問と、居るという事でちょっとした不意をつかれてドキッとしたので思考停止。
今の自分の頭の整理と、玲子が居るという現状に反応が遅れる。
今だにリーバーはフリーズしたままだった。
『(久々にリーバー班長見た)』
ようやく働きだした頭で考えたことがそんなことだった。声だけなら記憶にあるが、姿形を見たのは本当に久々だ。
『(…そういえば、最後に会ったのはいつだったっけ)』
その顔を最後見たのはいつだったか、記憶を遡ってみた。入団当初から玲子はリーバーに気にかけてもらっていた。ファインダーのときも、イノセンスに適合した時も、エクソシストとして任務をしていくときも、何かとお世話になっていたっけ。
任務をしていると、改めて科学班の有り難さや、凄さを実感したこともあったな。
『(任務、か。そういえば、巻き戻しの街から本部の人とは会ってないんだ…)』
巻き戻しの街から会ってないんだ。そう思うと結構長い間会ってなかったなと思う。
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