story

□力無い君と
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二人はリナリーの病室の窓をぶち破り、窓ガラスを、窓枠を、最終的には壁も破壊しての派手な入室を果たした。



勢いのおさまらなかった二人はそのまま書類や段ボールの山に突っ込み、弾みで向こう側の壁にまで激突した。


もくもくと煙幕が立ち込める中、勢い良く姿を表したのはラビだった。



「アハハハ悪い!これ便利なんだけどブレーキの加減がちょい難しいんだなぁ。
でも気持ち良かったろアレン」



何の悪びれも無く豪快に笑い飛ばしているラビは一緒に激突した仲間を探した。



「? アレン?」


辺りを見渡すが煙幕が邪魔でよく見えない。

すると、ラビの後ろから



「小僧ども…っ!」



憤怒のオーラを纏ったブックマンが、頭にアレンを乗せた格好で姿を表した。


「このバカタレが!リナ嬢は目覚めていたから良いものを玲子嬢の室だったらどうするつもりだ!!」

「わっ…悪かったって!そんなにデケェ口開けてっと入れ歯飛び出るぜ、じじぃ」

「誰が入れ歯か!!」


ブックマンはラビの鈍い音を立てて脳天を殴り付けた。


例の如くラビは痛みで「〜〜ッ!」と涙目に。




「…あの、ブックマン」


ラビへの制裁が済んだブックマンに、先程まで眠っていたリナリーが控え目に声をかけた。


「なんじゃリナ嬢」

「あの、玲子は?」


リナリーは別室にいる玲子が気になってしかたがない。


「玲子嬢ならまだ目覚めておらん。見舞いに行ってみたらどうか?」

「あ、そうですね。そうします」

「なら俺も行くさ」

「僕も!」


ブックマンの提案に次々と乗っていく。


コムイはその様子を見て静かに笑みを漏らした。



「じゃあ、皆で行こうか」



そして五人は別室で眠る玲子の室に向かった。


とはいっても三室開けたところに玲子は眠っていて、それほど歩く距離ではなかった。


002号室。

ここが玲子の病室。


ラビはゆっくりドアノブを回しドアを開く。


何だか女の子の部屋に入るような感じで心臓がドキドキと高鳴った。



「し、失礼しま〜す…」


そろりと一歩足を踏み入れ中を窺うラビだったが。


「何をちんたらやっとる!さっさと入らんか!!」


と、ブックマンに背中を蹴飛ばされ倒れ込むように入室するはめに。


「……いっててて…ι」


軽く頭を打ったが直ぐに顔を上げて室内を見た。





「…………え」
















その室には玲子の姿は無かった。
















「……なん、で…?」




玲子が眠っていたベッドは微かに温かさを残しており、ふっくらとした布団が盛り上がっていた。



玲子が居た痕跡だけが残るこの空間に虚しく立ちすくむ。



「…どうして?」

「……!玲子ちゃん、まさか!?」



アレンとラビは街で、ブックマンはリナリーの病室で足止めをくらっていた。



「……その隙に、アクマがここに忍び込んで……?」



二手に別れさせ自分達を分散させた後、本当の狙いである玲子を…。



「とっ、とにかく病室内を探しましょう!?誰かしら目撃しているかも知れないわ…っ!!」

「わ、分かった!」



五人は各々に散らばり四方八方に玲子を探しに回っていった。





アクマにさらわれたとか、殺されたとか、

そういうのだけは勘弁してくれ……!


「何処にいるんさ…、玲子!!」


"早く起きて"


あの時、玲子から離れなきゃよかった。


玲子を一人にして俺はまた手を離した。


以前と何も変わってない。

今度はちゃんと守ろうと思ってたのに

守りたかったのに

守りたいのに、守れない!



「玲子……!」



病院を駆け回り玲子を探した。


受付、ナースステーション、売店、何処にもいなかった。


今はひたすら階段を駆け昇っている。


一カケラの望みを託して屋上に向かう。


一気に階段を一階から昇ったせいか、今更足がガクガクした。


階段がうまく昇れない。




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