story

□力無い君と
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ラビはからかい半分で今度そう呼んでやれよと笑う。


が、それが出来るのはもう少し先になってしまうだろうという。



伯爵が動き出しノアが出現。


ラビは今度の任務はかなりの長期戦になるだろうと読んだのだった。


雪だるまの頭部を胴体に乗せ、ぽんぽんと叩くラビ。


お気楽なラビとは対象的にアレンは左手を握り締めて苦悶していた。



この腕はアクマを救うためにあり、人間を救うためにある。


人間を殺すためにあるんじゃないのに、と。


そこにラビはデリカシーのないこと「モヤシ」と言って、アレンを怒らせて街に一人で行かせてしまった。



「あちゃ〜?やっぱガキだ」


















「以上が私の記録する"ノアの一族"の痕跡だ」

「いやぁ、助かりましたブックマン。長い語りをさせてすみません」

「構うな。これが本業だ」



コムイは正面にある段ボールに座るブックマンに礼を言い息をついた。


耳にペンをかけ語られた書類を辛そうに見る。



「心中お察しする室長。アクマだけでも苦労する最中このような存在の出現は胸が痛むな」


「私なんか…。辛くなるのはエクソシスト達ですよ」


ブックマンは哀れみの眼差しをコムイに向ける。


コムイは書類に目を落とし、そう呟いた。


所詮、自分の立場は変えられず室長としてエクソシストに任務を任せ戦場に送り出す。


彼らエクソシストが戦っている間、自分は教団でぬくぬくとデスクワーク。


危険に身を曝すエクソシストとは正反対。


武装する彼等と非武装の僕等。


非武装は武器を持たずひたすら考える。


頭を使って、この戦いに勝たなければ僕等のある意味がない。


勝つ事、守る事、生きる事を考えながら…。



自分の思考に入り込んでいたコムイは僅かにブックマンの視線がドアに向いていたことに気付かなかった。


身軽に段ボールを下りていき、初めてブックマンが何かを感じ取った事を知った。



「身を潜めておれ室長。闇に主の顔まで曝す事は無い」




ブックマンは静かに言った。













破壊された街、駅は瓦礫の残骸が目立つ。


天井は破壊され煙を外に放っていた。


汽車は脱線し傾いている。


そこにアレンとラビはけだるそうに寝転がっていた。



「何体壊った?」

「30…くらい」

「あ、勝った。俺37体だもん」

「……そんなの数えませんよ」



壊した数を競ってどうするのだろうとアレンは思ったが、どうやらそれはラビの癖らしい。


次期ブックマンも大変のようだ。


怠い身を起こすアレン。


「大丈夫から病院…いて!!」

「大丈夫か?」


起き上がろうと着いた左手に痛みが走り大声を張ってしまった。


「まだ完治してねんだろ、その左」

「まぁね。僕もラビ達みたいに装備型がよかったな」


寄生型は不便だとぼやいた。


ラビは槌を地面に刺し、アレンに病院の方角を確かめる。



「ここ握って」


そう言って差し出したのは槌の柄。


アレンは何気なくその柄を掴んだ。


何をするのかも分からないアレンはただその成り行きを見ているだけ。


槌はヴ……、と音を立て、アレンの顔が一瞬ぶれると一気に伸び上がった。



「うわあああ!?どわあああ!!ぎゃぁぁぁあぁぁぁ!!!!」



飛び出した空に出来るかぎり叫び続けるアレン。


驚くなんてものじゃない。

恐怖さえ覚える速さ。


慣れたようにラビは"伸"と唱えて槌を伸ばしていく。


アレンは顔を引き攣らせ雄叫びを上げながら、二人は病院まっしぐらに飛んで行ったのだった。






破壊した駅から徐々に離れ、病院に近付いていく。


病院が見えるところまでやってきていた。


病院が近付き、そろそろ減速した方が良さそうだと思ったのだが。



ラビのイノセンスはさらに加速。


リナリーの病室がだんだん近くなって、近くなって……。



「ぅゎぁぁああああああ!!!



止まらないラビのイノセンス。







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