story

□力無い君と
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アレンはすぐ側に合った段ボールに適当に腰掛け、書類を整理しているコムイに聞いた。


リナリーと同じように、玲子もブックマンの治療を受けていたから心配は無い。


「ただ、目が覚めるのはいつかは分からない」


忙しそうに書類を整理しているコムイを見てアレンはふと思った。


「…コムイさん。忙しいのにどうしてわざわざ外に出てきたんですか?」



自分やリナリーのためでは無いはずだ。


話の確信を付いてくるアレンにコムイはゆっくり振り返る。


あくまで表情は笑顔だか、少し困ったような顔をしていた。



「ノアの一族って何なんですか?」


人間であり、人間を滅ぼそうとしているノアの一族。


アクマを従えて世界を飲み込もうとするノア。


彼等は何を考えているのだろう。

彼等はなぜ、玲子を狙う?


全く予想がつかない。



「それをウチらに聞きにきたんさ」


今まで無かった第三者の声に、アレンとコムイは振り返った。


書類まみれの紙の山。


そんな中に小さな空間があり、そこに器用に納まっている人。


みかんと書かれた段ボールの上に両手を組んで顔をのせていた。


にこりとこちらを見ているが、突然の訪問で驚いている二人には反応をする余裕がなかった。



「ノアは歴史の"裏"にしか語られない無痕の一族の名だ」


ノアは歴史の分岐点に度々出現している。


だが、どの文献にも記されてはいない。


善か悪か分からない一族。


そんなノアがアクマを率いる伯爵側に着いた。


これはもう、アクマを破壊しているエクソシストを敵対するということが分かる。


この事態に対処しなくてはならなかった。



「たがらはわざわざ来たんしょ、コムイは」


コムイの思考をさらさらと代弁しているラビの口は止まらない。


「この世で唯一裏歴史を記録しているブックマンのトゴえ゙…」



ラビの台詞が終わりに掛かったとき、ドッと鈍い音を立てて右頬に蹴りが入る。


蹴りを入れたのは勿論ブックマン。


ラビは勢いよく吹っ飛んで行った。



「しゃべりめが、何度注意すればわかるのだ」

「いーじゃんよ俺ももうすぐアンタの跡継ぐんだしさぁ!」

「お前のようなジュクジュクの未熟者にはまだ継がせんわバァーカ」



蹴りを入れられたラビは頬に青筋を浮かべながら笑顔でいうが、流石年の功というべきか、ブックマンは軽く吐き捨てて黙らせていた。



「アレン・ウォーカー」

「はっはい!!」


びくびくと怯えながらアレンはブックマンに向き合う。



「今は休まれよ。リナ嬢が目覚めればまた動かねばならんのだ。急ぐでない」


アレンに休むよう言ったブックマンは、その部屋からアレンとラビを締め出した。



「「………」」



しばらく二人はその場で放けていたが、互いに目を見合わせるとようやく外に出た。









外は雪が積もっていて銀世界が広がっていた。


吐く息も白くなって空に消えていく。


積もる雪に足跡を残しながら白銀の一面に飛び込んだ。



「トシいくつ?」

「15くらい」

「あ、俺お兄さん。18だもん」


アレンとラビは積もった雪を集めていくつかの雪だるまを創っていた。



「15ねぇ〜白髪のせいかもっとフケて見えんぜ
あ、俺のことラビでいいから。Jr.って呼ぶ奴もいるけど」


雪だるまを丸めながらアレンを見上げるラビ。


アレンは雪玉を抱えながら、ラビに言われた白髪というのを気にしていた。



「アレンのことはモヤシってよんでいい?」

「は?」


クスっと笑って言うラビをアレンは本気で嫌そうな目をして否定していた。


勢い余って、折角創った雪玉をボブッと崩してしまった。



「だってユウがそうよんでたぜ」

「ユウ?」

「あれ?お前知らねーの?神田の下の名前。神田ユウっつーんだぜ」


アレンは神田の名前を知ったというのに微妙な反応しか示さなかった。


どうやらアレンにはどうでも良い事のようだった。




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