story

□力無い君と
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未だ眠っているリナリーの側に、額に停止中と書いてあるコムイがピーという寝息を立てて眠っていた。


声を掛けてみたが起きる気配は無い。

寝息はピーコに。


肩を揺らしてみたが起きる気配は無い。

寝息はおすぎに。


「…なにこの変な寝息」


爆睡中のコムイを起こすにはやはりこの言葉しかないだろう。


アレンはコムイの耳元に近付き、例の言葉をコムイに聞かせた。



「リナリーが結婚しちゃいますよ」



さあ、後は起きるのを待つだけだ。


跳び起きて来るコムイを待ち構えているアレン。



しかし


「…あ、あれ…ι?」


ピクリと反応は示したものの、起きる様子は無かった。


いつもなら有り得ないことだ。


アレンはもう一度強く言っていたが、やはり反応をするだけで起きる事は無かった。


「えぇ!?な、何で!?何でェι!!!!?」


おかしい、絶対におかしい!


いつもなら真っ先に反応して凶器を握るはずなのに。


今のコムイさんはおかしい。


一体どうやったら起きるのだろう。


この爆睡中のコムイは、リナリー抜きにどう起こせば良いのだろう。




「……コム」



まだ、言い終わってなかった。








「…………玲子……」














「…え…」












コムイは玲子の名前を呼び、また眠っていた。


寝言、だろう。


でも、そんな些細な事に反応せずにはいられない。


寝言で玲子を呼んだのだ。


コムイは玲子の夢を見ている、玲子が夢に出ているのだ。


別に玲子の夢を見るのが悪いわけではない。


自分だってよく教団の人達が夢に出てくる。


リナリーや、教団の人、ムカつくけど神田や、それから玲子さん。


夢を見るだけなら、別に気にはしない。


ただ気になってしまったのは、いつもなら"ちゃん付け"で呼んでいるコムイさんが、玲子さんを呼び捨てで呼んだ事。



夢の中では、呼び捨てで読んでいるの?

コムイさんはそれを望んでいるの?



そう思うと何だか、何だか凄くムカムカしてきた。


ムカムカして、おまけに意地悪な気持ちになる。


この気持ちは意地悪というのか、よく分からないけど…。


それでも、イライラと意地悪な気持ちは抑えられなかった。




「玲子さんと僕、結婚する事になりましたから」




気が付いたときにはこんな事を言っていた。


しかもそれで満足したのか、ふんっと思い切り息を吐く始末。


「……あ、あれ?」


…でも、それでもコムイさんは起きなかった。


てっきりこういうことを言うと、襲い掛かって来るように攻撃をして来るのではないかと思っていたのに。


自分の思い違いだったのだろうか。


それはそれで、恥ずかしい…。

思い上がりも良いところだな。


コムイさんはピクリとも反応しなかった。


そう、ピクリとも…。



「…あ、れ……ι?」


おかしい。


コムイさんの顔色が悪くなっているような気がする。


だんだん青くなっていってる…。


血の気が引いたような色に変色している。


気付いたころには真っ青。



「…っていうか息してない!!!?」


衝撃が大き過ぎたんだ!


今のコムイさんは所謂、ショック死状態!



「ぎゃー―!?!?起きて、起きてくださいコムイさん!!」

「…お………お花畑」

「ダメー――――!!!ダメだから!摘んじゃダメだから!川は渡っちゃダメだから!!」



それからコムイがこちらに戻ってくるのにはかなりの時間が必要となった。

















「アレンくんか…何だい?」


ようやく正気に戻ったコムイ。


ここでアレンはやっと安心することが出来た。


「リ、リナリーのお見舞いに…ιまだ目が覚めてないみたいですね」


チラリと見ればまだ静かに眠っているリナリー。



「…あの、玲子さんはまだ…?」






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