story
□迫る時間
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そうだ、敵なんだ…。
あたし達は今敵と戦っていて、この中から出るために出口を探してる。出口はロードの力で作られて、この建物の最上階にある。
ここから出なきゃいけないんだ。
だから皆戦っているんだ。
「変な気は起こさないほうが良いよ?」
『!』
「出口を消そうと思えば出来ることなんだからさぁ」
それに今、君の目は見えてない。どんなに暴れようとも、イノセンスの力が制御されている君には勝ち目なんて無い。
イノセンスだって、“今は”力を無意識に抑えてる。全開の力を出す事は出来ない。
君の意志じゃない。イノセンスが勝手に力をセーブしているんだ。
「さっきティッキーが言ったこと忘れた訳じゃ無いでしょぉ?」
盲目になった理由は、君のイノセンスが原因だって言うことをさ。
「玲子はイノセンスのおかげで助かってる。でもその反面、失明してる。
君のイノセンスは目に寄生してるんでしょぉ?目が見えないなら、イノセンスの力も落ちるはず。
それなのにイノセンスはいつも通り使えて、しかも“同化”はパワーアップまでしてる。その原因はなんでか、ティッキーが言ったでしょぉ?
失明していて、イノセンスが勝手に力抑えてるから、“アレ”の進行が進んでるんだって。
“ダークマター”の力がさぁ」
『言うな!!』
ロードの言葉に耳を塞ぎ、大声を出して遮った。
自分がアクマに繰り返し言われる言葉
〔アナタヲ探シテタ〕
その理由を知りたかった。
ずっとずっと知りたかった。
命まで狙われていたというのに、何故必要とされるのか、訳が分からなかった。
混乱させるのが目的だったのか、考えすぎておかしくなった。おかしくさせた。
だから、このがんじがらめになったものを取り除きたくて、もがきたくなくて、理由が知りたかった。
それでも言わないで欲しかった。
こんな結果を期待していた訳じゃない。
いざ聞かされるとなると耳を塞ぎなくなる。
さっきティキに言われた言葉が蘇る。大量に話された言葉。信じたくない事実。脳は活動を停止して、理解したくないかのように音を聞くだけ。
知りたくなかった。
自分の存在を今すぐ変えられるなら、最初からやり直したい。そうしたら、失うものだって無かったかもしれない。
知りたかった。
知りたくなかった。
知ってしまったから戻りたい。知らなかったあの時に戻りたい。
でも戻れない…。
イノセンスは目に寄生しているから、視力が落ちるのは当たり前。直結して目が見えなくなる。
でも、目が見えなくなるだけで、力は使える。それもまた、限られた力のみだけだった。
同化、影を使うこと、それだけ。
でも、“同化”は…、
口を閉ざてしまった玲子に、ロードは目を落とす。
包帯姿のままでは可哀相だからと言い、テーブルの上に傷に障らない程度の服が用意されていた。
ロードが用意したものだった。
「…着替えよう?」
そういってロードは服を手に取り、玲子に寄っていく。
玲子はおとなしくロードが服を着させていく動作に身を任せた。
ロードは玲子の手当てが済むと、適当に本を選んで椅子に腰掛け、パラパラと適当に開いたページを眺める。
ティキも近くにあるソファーへ静かに腰掛ける。
少しの間、沈黙が流れた。
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