□騒動事件
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夜の貴族の集まる屋敷。
優雅な時間が流れている。
舞踏会に出席する女性達の視線は、ある一点に集中していた。


「美形って得だよね」


その言葉を近くで聞きながら、ロードは飴を舐めていた。そして会話を続ける。初めての舞踏会に出席する令嬢に、その相手を受けたティキ。ロードはその様子を遠くから眺めていた。






一夜明け、とある屋敷を訪ねる。そこには“兄さん”と呼べる人物と、


「千年公ぉっ!」

「ぐふっ こんにちはロード…」


千年公と飛び付くロードがいた。
ティキはというと


「今日も格好良いね弟よ」
「気持ち悪いんだけどシェリル兄さん」


迫り来る“シェリル兄さん”に抵抗をしているところだった。
ちょっとしたじゃれ合いに満足したのか、屋敷の中へと通され紅茶が振る舞われた。


「先日の舞踏会はご苦労様」


シェリルは舞踏会での労いの言葉をティキに向けると、ティキはああいう仕事が一番疲れると零した。
シェリルはシェリルで貴族に顔を利かせておくのは大切だという。そして話しの流れはティキの結婚の話しへと移り変わる。


「千年公、ティッキーもそろそろ結婚させちゃったらどうかな。この子ならよいパイプのご令嬢がより取り見取りだよ」


そう勧めて来るシェリルに伯爵は本人が良いなら構わない、とサラリと流した。


「冗談でしょ」


伯爵の言ったことに「うげ」と顔を歪ませる。シェリルの問い掛けに即答するティキだが、シェリルはそんなこと聞いちゃいなかった。シェリルはうっとりとして自分の結婚生活を語りだし、終いには鼻血を吹く始末。それもロードに「お父様」と呼ばれたからだという。

その光景に軽く引くティキ。


「妬いてるのティッキー?美しいキミにももちろん僕は感じてるよ」
「鳥肌が止まらねェよ」


親指をグッと突き立てているシェリルに、ティキは呆れる他なかった。
そのやり取りを見て興味をそそられたのか、ティキの膝元にちょこんとやって来たロード。説明が面倒なのか、ティキは話を切り替え髪が切りたいと言った。


「ヤダ!まだ見てたいッ!切ったらコロスッ!!」

「イッ ……っ」


ロードからのパンチを受けたティキは調度戦いでの傷跡に入ったらしく、その痛みに耐えていた。
耐えている姿を見てまだ傷が癒えていないのだと悟ったロードは、傷の具合を心配する。


「ロードったら叔父さまに失礼でしょう」


そう言ってティキからひょいと離す母のトリシア。ティキにとってはいつもの事なため気にはしていなかった。


「それより、そろそろ部屋に戻った方がいいんじゃないか?顔色が悪いよ」


ティキの一言にシェリルも同意する。二人の気遣いの言葉により、トリシアはその場から席を外した。

ここから、人間としてではなく伯爵側としての会話が始まる。



「…アレンといえば、ルルの奴が恨めしそうに泣いてたよね。“卵”取り戻せたけど壊されちゃったんだって?」

「そー」


シェリルの膝に座り、紅茶を手にしながらロードが答えた。
卵は破壊されてしまい大きな損害となった。だが、新たなものを造り始めている千年公には、誤差はあれど大した問題ではなかったといえる。

エクソシストはアクマをただの殺人兵器としか思っていない。

伯爵はそれでいいとした。彼がそこまで慎重になってしまうのには理由があった。

「ハート」という存在。それが全てだった。


「“ハート”の適合者か…。本当に目覚めてるんスか?」


にわかに信じ難いと言ったふうに話すティキ。しかし伯爵は断言した。絶対に目覚めていると。

本物が簡単に出てくるとは思えないが、今はアレン・ウォーカー、リナリー・リーのイノセンスは注意しておくことが殊勝だろう。

こう会話をしながらも、伯爵は紅茶に角砂糖を入れていく。一体いくつ角砂糖が入ったかも分からない状態の紅茶。それを平然と飲む伯爵にロードは「飲んだ…」と驚く。



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