story

□操り糸
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図形に近い黒い不思議な形。

それに、目の前にあってはならないものがある。誰もが信じられないとそう言葉をこぼしていた。


〔白髪、奇怪な左眼…。お前が「アレン・ウォーカー」だね?〕


フォーの体内からアクマが現れた。皆が信じられないと固まっている。ただ空中に浮かぶアクマ眺めているだけ。

そんな科学班など眼中にないかのように、アクマは首を傾げてこう言い放った。


〔…?月宮玲子はどこ?〕

「…っ!!?」

〔黒髪長髪、月宮玲子〕


目の前にいるレベル3のアクマ以外に、もう一つの声が聞こえた。見れば、方舟からもう1体のアクマが現れていた。2体のアクマは玲子を探し辺りを見渡す。

だが姿はない。

片っ端から探そうか、と互いに嫌な笑みを浮かべていた。







不穏な空気が満ちている。

いつも通り、一人の時間は精神統一をしている時、ふとそう感じた。何度か感じたことがあるこのざわめき。

嫌な予感のせいで胸がドキドキする。


『…何だろう。嫌な感じがしてならない…』


精神統一所ではなかった。

なぜなら、この感じ…。


「月宮!!」

『…バクさん?』


不穏な空気を満たしたその中、バクの血相をかかえた声が響く。


「月宮!無事か!!」

『…え?』

「アクマが現れたんだ!君を探してるっ。早く逃げるんだ!!」


ウォーカーがやられた、そう聞くと包帯で顔の半分が隠されている表情が曇った。今はフォーが時間を稼いでいる。だから、君とウォーカーと一緒に逃げてくれ。

急いで玲子の手を引くが、玲子は立ち止まり進もうとしない。


「今ウォーカーに怯えてる場合じゃないだろう!走らんか!」

『…違います』


引いた手は解かれ、こちらに背を向ける。


『もう、遅いみたいです』

「…え…」


気付いた時には、玲子に突き飛ばされた後だった。突き飛ばされた怒りで振り向けば、そう距離のない所にアクマがいた。


「月宮!?」

『行ってください。ここはあたしが食い止めます』

「しかし君は…!」


目が見えないじゃないか。
そう叫びたくても、声を飲み込んでしまう。

なんだ、その笑みは…。

自分は大丈夫だから、早く逃げて。儚く、なんともいえないその笑顔に、苦しみが浮かび上がる。

…馬鹿者。

逃がそうとして笑う奴がどこにいる。


「…っ。すぐ終わらせて来い!お前がいなきゃ意味ないんだからな…!!」


置いては行かない。

絶対生きろ。

玲子は包帯を解き、不安を消すようにまたこちらを見て笑みを浮かべていた。


納得はしていなくとも、引き返して行ったバクを見届けると玲子はアクマに向き返った。ふわりと風が起こり、すぐ近くにアクマが舞い降りた。

バクはこのアクマが自分を追っているといっていた。
あの様子からして、このアクマは襲いに来たと思っているのだろう。だが、このアクマからは殺気が感じ取れなかった。

今は盲目にあるが、力を使えば居場所が分かる。それにフォーとの特訓もしたため、反射神経もある程度戻りつつある。アクマが来ても何とかなる、そう思っていた。

でも、このアクマは自分に膝をついている。


〔参りましょう。江戸へ〕

『…え?』

〔伯爵様とノア様がお待ちしております〕


アクマは片膝をつき姿勢を低くし、頭を垂れる。そのアクマの様子と言った言葉に玲子は眉を寄せた。


『何度も言ってる。あたしはエクソシストだから、ダメだよ。アクマを破壊しなきゃいけない』


敵同士でしょ。



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