story

□戸惑い
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「…はあっ!…たあ…!」


死角から次々と飛び道具が飛んでくる。それを躱し、目標である生物反応のある物の感知に集中する。


「後ろがら空きだぜっ!」

『…ふっ!』


ガギィンッ!


『…生命反応は無し、運動性、加えて攻撃性も有り。危険と判断し、排除優先』


影を広げた所からそこまでの情報を読み取り、何が適策か判断する。その特訓の成果が徐々についてきた。


「…ふっ。やるじゃねーの。この特訓を始めてそう時間は経ってねぇぜ?」


フォーはそういい、背後から攻撃を仕掛けた相手に笑いかけた。
こいつ、本当に目が見えてねぇのか、と思うくらい反応が早く位置も正確に読めてる。ブランクなんて考えられない。正直にそう思った。

こいつの順応性の早さには本当に驚かされる。こいつがこんなだから、いやでもあいつ、もう一人のエクソシストと比較してしまう。


「(…こいつのこの早さは、ウォーカーにも分けてやりてえくらいだな)」


目の前にいるこいつは、元帥だからっていうプライドで動いてる訳でもなく、自分のやりたいことだからなんだろう。こいつの飲み込みの早さは本当に感心する。

でも、あいつとウォーカー、何がどう違って、こんなに差があるのだろう。


「おう月宮。お前、体の調子はどうなんだ」

『…え、』


こいつの力は、どうやら影を使うことらしい。
影の範囲を広げる、影を使って対象物への反応を早くする特訓はもうクリアしているように見える。


「お前の身体が動くのが可能なら、あたしはもう一段階上の特訓をしてやろうかと思うんだが」


こいつが動けるかどうかは、バクやウォンに聞かねぇとわからねぇな。


『…良いんですか?』

「バクとウォンの判断次第だな」


そういうと、こいつはそうですね、といって笑う。

…なんだかなぁ。
あたしはこいつのこの力の抜けるような笑い方が好きなのだろうか。つられて笑っちまう。


「なら聞きに行く。怪我が大丈夫みたいなら今度は体術だ」


こいつのこのセンスなら、体術もそう時間もかからないと思う。それに体術と組み合わせたイノセンスの扱い方にも慣れておかねぇとな。





「……って、あたしはそう思うんだが?」

「ふむ…話は大体分かったが、月宮の状態による。月宮の状態はいたウォンが診てる。データが出るまで少し待て」


バクはフォーにそう伝え、小さく息を吐いた。まったく、エクソシストというものはどうしてこんなに無茶ばかりするのだろう。

ウォーカーといい、月宮といい、やれることならすべてこなしたいという考えは見ているものを呆れさせる。別に悪い事じゃないんだが、見てるこっちの身にもなってほしいものだ。


しかも、やり甲斐があるのかどうかわからないが、何気に月宮はフォーに気に入られているみたいでもあるし。フォーと特訓していて怪我をしていないのが幸だ。


「バク様」

「ウォンか。月宮の具合はどうだった」

「問題ありません。戦闘を想定したものをしても大丈夫かと」


フォーと戦闘体形の特訓をしても身体には差し違えることはない。そこまで身体の傷が癒えているようだ。
だが心配は絶えないもので。



「…フォー、手加減できるか?」

「は?」

「だ、だから…その」

「ばっかじゃねぇの!?手加減したらあいつの為になんねぇだろ」




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