story

□戸惑い
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「…しょーがねぇ。月宮、お前今までどんな戦い方してきた?」


イノセンスは使えるか今は分からない。
イノセンスを使った特訓はまだバクに許可をとっていないから、避けた方が良さそうだ。


『今までは、クナイを手に同化させて戦ってました』

「でもそれはイノセンスの力で出来た事だろ?」

『多分…』


今のこいつじゃ、イノセンスが力を弱めて身体に負担をかけないようにしているってバクが言ってたからな。イノセンスを使うのは難しいだろう。


『…でも、根拠は無いですけど、出来そうな気はします』

「やってみるか?」


玲子は静かに頷いた。
根拠はないがやる気はあるらしい。本当にこいつは根性見せてくれる。


「クナイの変わりっちゃああれだけど、ほらよ」


何処から出したのか、フォーは短剣とナイフを玲子に手渡した。玲子は確かめるように短剣とナイフの形を手で見る。


「一度やって見せてくれ」

『はい』


多分無理だと思うが、もし出来たとしたら、無茶しないようにストッパーにならないとな。短剣を手に取り、集中している。

バチッと小さな稲光が起き、大きく音を立てる。一瞬の眩しさに目を閉じ、そしてもう一度見ると、そこにはすでに武器を持った玲子がいた。


「出来…た?」


手の甲から刃が現れ、小さな電流が走っていた。フォーはこれでやれるな、と楽しそうにしていた。











『(…おかしい)』


玲子は以前とは違う感覚であまりしっくりきていなかった。


『(いつもと違う…。これもあの声のせい?)』


いつものようなイノセンスを使っている感覚はない。もともと、バクにイノセンスの力は弱まっていることを知らされていた。

だから、同化するのも出来ない、そう思っていたのに。なんで出来そうな気がしたんだろう。

ましてや今のこの同化、イノセンスを使っている感じが全くしない。試しにメデューサアイを発動し、莫を作ろうとしたが、頭に激痛が走りそれは出来なかった。

目が見えない事とイノセンスの力の低下は関係しているのだろうか。だとしたら、この影の力と同化はどうして使えるのだろう。

考えたところで答えはでなかった。


「それじゃ、少し手合わせしようぜ」

『…えっ』

「大丈夫だって。ちゃんと手加減してやるからさ」


フォーは地面を蹴って距離を取った。雰囲気からしても、これはやる気らしい。仕方ない、と立ち上がり影に集中する。

ザリッという音がした。

その音と共に影の感覚も目標を追う。今回は体術の訓練なため、流石に遠距離からの攻撃は全くなし。

直ぐさま距離を縮めてフォーは自身の腕で作った刃で玲子を襲う。やられまいと玲子は後ろへ跳び、フォーと距離を取った。


「よく躱したな」

『どうも』


ニヤリと笑うフォーは、楽しくて仕方ないようだ。


「(こいつは何処まで伸びるつもりだ)」


反応の早さがまた速くなっている。しかもその反応にちゃんと身体もついていっている。期待通りの反応を返してくれて嬉しくなる。

急激な変化さえしないが、特訓を行う毎に着々と力をつけていく。


「はあ!」

『くっ…!』


だがまだまだだ。

力を使いながら自分の身体を動かすのは鈍さが残る。


「今のは体術だ。あたしの腕だけに気を取られとるようじゃまだまだだな」


腕だけなわけない。蹴りだって入る。



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