story
□戸惑い
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そういう意味で言ったわけではない。
ただ、いくら元帥だからといってウォーカーと違い彼女はその、女の子だ。病み上がりにハードなものは極力避けたい。
「ははーん。さてはお前、月宮に惚れたな?」
「…なっ!バ、バカモノ!!そんなハズないだろう!」
俺様はリナリーさん一筋…。
「ま、あたしはどうでもいいけどな」
「貴様俺をおちょくってるのかー!!」
そういうわけじゃない!そういうわけじゃない、はず。…多分。
「なんだよバク。真面目に惚れたのか?」
「そ、そんな訳無いだろう!!」
そうだ。これは支部長として、いまの彼女の状態を見て判断したことだ。個人的な意見ではない。
いくらウォンが大丈夫だと言っていても、支部長であるこの俺が許可出来なけれは実行は不可能。
…ちょっと待て。
こういう事を考えている時点で個人的な意見というのでは…?
「っだーっ!!違う違う違ぁーう!」
個人的な意見を取り入れないようにするには、こいつらの言い分を聞く事が一番だ。俺様は断じて個人的な感情で言っているわけではない!
「良いだろう。許可する!」
意気込んで許可をしたのはいいのだが、なんだか上手いように丸め込まれたような気がする。
…気のせい、か?
「サンキュー。じゃ、月宮にそう伝えて来るぜ」
フォーが振り返り際、ニヤリと怪しく笑っていたように見えたのは、それも気のせいだったのだろうか。
*****
「(…上手い事ハマってくれてよかったぜ)」
フォーは一人バクの伝言を玲子に伝えようと足を進めていた。まったく、可笑しいくらいにバクはあたしの言った言葉に百面相してくれた。
あいつは神経質だからな。
ちょっとした言葉でも深く考えて一人で悶々とするんだ。それで、自分の考えた結果が、自分自身に恥をかかせるようなものになれば、それを避けようと考えを巡らす。
簡単に言えば、空回りだ。
まあ、そのお陰でこれから特訓が出来るわけだから、感謝しないといけないが、
「(バクのあの顔…、月宮にも見せてやりたかったぜ!)」
あの百面相、かなりウケた!!
フォーは袖で口元を隠すようにして一人笑っていた。
しばらく歩いて、玲子のいる部屋にたどり着く。フォーがいなくなったその部屋には、激しい物音はせず、変わりに明るい声が響いていた。
どうやら科学班の新米達との会話に花が咲いているようだ。主に蝋花が話を振り、李佳がその話を膨らませ、シィフは二人が暴走しないよう話の内容を調節している。
そんな感じだ。
玲子はというと、相槌を打ったり笑ったりしているだけだった。そんなわけで遠慮する事でもなく、フォーはその空間の中に入っていく。
『…フォーさん!』
「何だよ、バレてたか」
一番にあたしの存在に気付いたのは月宮だった。あたしとの特訓は中断したはずだが、こいつは自主的に自分の力を磨いていたようだ。
一応気配を消して入ってみたんだがな。見破られてたみたいだ。
「バクから体術の特訓の許可が出たぜ」
『本当ですか?』
ああ、と肯定すると科学班の新米三人はぎょっとしてその場から少し離れた。
なぜなら、あたしが武器を構えて近づいたからだ。
「…フ、フォーさん!いきなり襲い掛かるのは良くないですよ!」
「相手丸腰です」
慌ててそういうのは蝋花とシィフ。
ま、確かに不利っていてば不利だな。それに体術になるわけだから、殴る蹴るは基本として、それなりに武器で反撃をしてもらわねぇとつまらないし。
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