story

□まだ
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俺達はどんな顔をしてあいつに会えばいいのだろう。

傷つけたあいつには、なんて声をかければいい?
傷つけられたあいつには、なんて顔をして会えばいい?

傷つける方も、傷つけられる方も、何らかの理由があるはず。それを考えたら、どちらにもどう声を掛ければ良いのか分からない。

アレンは、どうして玲子を傷つけたのか。
玲子はどうしてアレンに傷つけられたのか、分からない。

もう、何がなんだか分からない。どうしてと考えても、答えを知る人などいない。頭を抱えて悩んだって、アレンや玲子が帰ってくる訳でもない。


俺は、どうしたらいいんだ。


こんなに後悔するなら、あの時意地でも玲子を追いかけておけばよかった。そうしたらこんな事にはならなかった。後悔したって何の解決にもならない。
それくらい分かってる。

でも、諦め切れない。


「くそっ…」


結局、俺は後悔しか出来ない。
何も変わっちゃいなかった。




*****




クワン、と深い闇に落ちていく。
身体はふわふわと宙にういていて前にもこの感覚は味わった事がある。

この感覚は…



〔よぉ、久しぶりだな〕


この男の声もまた、以前に聞いたことがある。うっすら目を開けてその姿を見れば、それはこの世界を統べる者。


〔あれ、まさか久々過ぎて俺の事忘れた?〕


おーい、聞いてる?といつもの事のように飄々としているこの男。
顔を覗き込んでくるこの男は、「ショック受けてるところ悪いんだが」と言って玲子に聞かせるようにいった。


〈急で悪いが話がある。
この世界の事でだ。

お前はこの世界、何故暗闇なのかを考えたことはあるか〉


そういった問い掛けがきて、夢の中だからだと返すが、それは違うといって簡単に否定されてしまった。


〈この暗闇は作り出されたもの。もともとは明るく光が指し、先を照らしていた。それがいつしか濁り、暗闇へと変わったのはつい最近の事。

千年伯爵が現れてからだ〉


闇の進行は進む一方で、その闇色はこの領域に納まらず外の世界にまで浸透し始めている。
進行を止めない限り、近い未来、この夢の世界と同じような闇色に世界が飲み込まれてしまうだろう。

だから、一刻も早くこの世界の先を闇から抜け出してやってくれ。



〔…俺も、そろそろ制御が難しくなって来たからな…〕



今までは何とか持ちこたえては来れたが、これ以上は一人の力では無理に近い。早く起動修正をしてもらわなければ…


〔俺も、この闇の色ごと消滅してしまう。そうしたらこの世界は〕



この世界の柱が無くなり

崩壊へと進むしか道はなくなる。

一刻も早く、この色を払い去ってくれ。




男はそれだけを言うと、具現化しきれなくなったのかブツンといって消えてしまった。



『…柱が無くなる…』


崩壊へ進む道をどうにかして防がなければならない。だったら、早く目覚めて力を付けなければ。

起きて、力を付けて、闇色を払い明るい未来を導かなくては、この世界が消えてしまう。ラビやリナリー、アレン、神田…みんな消えてしまう。

起きて、戦わなきゃ。

だけど、


起きたくないと思っている自分がいる事も事実だった。


どうして、アレンは、あたしを攻撃したの…。

責めるつもりなんてない。イノセンスが崩壊しかけていたから、誤作動を起こしたのかも知れないし、アレンは止めようとしていた。

理由が知りたい。

ただそれだけだから、責めるつもりなんてない。


『…理由を知るには、起きなきゃいけない…』


玲子はそう思うと目を閉じ、暗闇の世界から意識を飛ばした。





*****




目が覚めるとそこはまた暗闇。
光が指し込んで来なかった。

この部屋、明かりが何もない。ただ真っ暗な空間。
ベッドで寝かされていた身体を起き上がらせ、周りを見る。そこには誰もいなかった。




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