story

□デリート
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『…どこに行った、…っ?!』


ティキを追い、やっと見つけた二つの影。そこにはアレンの首を締めているティキがいた。ティキの隣ではカード内にいるセル・ロロンがデリートと急かしている。

いけない、早くしないとアレンが危ない。


『やめろ!!』


イノセンスを発動し刃を作り、踏み込む玲子。アレンの首を締めているティキの腕ごと切るつもりで大きく刃を振るった。


「うおっ!!」

「玲子さん?!」


ティキは間一髪といった所で腕を離し玲子の刃からは逃れられた。
ティキの腕から解放されたアレンは前に立つ玲子の背中を見て驚いていた。


『アレン大丈夫?!』
「な…、んとか」


よかった、と安心した声を聞くとアレンは申し訳なく思ってしまった。


「すみま…」

『謝らなくていいよ。遅くなってごめん。後はなんとかする』


許さないんだから、と玲子はティキを見る。
アレンを傷つけ、スーマンまで手に掛けた。そんな所を見て許してやれるほど心は広くない。玲子はティキに向かって剣を振り下ろす。


「ちょっ、ちょ、ちょい待ち!」
『誰が待つか』


仲間を傷つけたんだ、お前の言う事など誰が聞くか。玲子からくり広げられる剣の嵐を避けるので精一杯なティキ。

そこに追い撃ちをかけるように玲子はいくつもの莫を作り上げた。数え切れないほどの莫をティキに向かって投げ付ける。莫は意思を持ったかのように加速し、ティキに向かって行った。

その莫の影に隠れ、玲子は剣を振り上げる。


『はあああっ!』






刹那に飛び散る赤い液体。

それは空中で舞い、地面へと落ちた。
いくつもの赤い後が地面を塗り替え、草だらけの竹林に一つの円が出来上がった。



「…え…」


訳も分からずただ呆然とするだけだった。


今、何が起きた?


生暖かい感触が掌から伝わり、生温い液体が腕を伝う。アレンは自身に起きていた変化に戸惑いを隠せなかった。


「…ああ……っ」


うそだ…。

なんで、

なんで僕は、



玲子さんを襲っているんだ?



僕の目の前で血に濡れているのは玲子さん。


僕の腕は、彼女の血液が纏わり付いて離れない。


彼女も一体何が起こったのかわからないようだった。

この時にお互いが理解したのは、心の痛みと身体の痛み、絶望に飲まれていく感覚。


『…な、んで…』

「ち、違う…僕じゃ…っ」


か細く聞こえた彼女の声が、鋭く僕の胸を突き刺した。

ドシャッと音を立てて倒れる彼女に、トドメといわんばかりにまた腕が勝手に暴れ狂う。
まるで獲物を見つけた獣のように、限界を超えてしまったはずの腕は暴れ続けた。


『ああああっ!!』
「うわあああっ!やめろおぉ!!」


壊れかけたイノセンスの腕が、狂ったように何度も玲子を襲った。



マナをやった時と同じように…。



『…アレン…』


最後にそう言って彼女は気を失った。
ぼろぼろになった玲子の姿。

団服など、本来の役割など果たしてはいなかった。


「…ヒデェな」

「…っ!」


ティキの声が嫌なくらい良く響き渡った。一歩ずつ近づいてくるティキに、動けずにいるアレン。
放心状態のアレンにゆっくり触れてイノセンスを破壊した。壊された反動でアレンは地面に倒れ腕はガシャンと音を立てて崩れた。


「玲子は少年を助けようとしたのに、少年は玲子を殺した」

「こっ、殺してなんか…」

「ま、確かに生きてるわな。虫の息だけど。でも、違う意味で殺した。理由はそのうち分かるよ」


ティキの一言一言がアレンの精神を破壊していく。




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