story
□デリート
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「さて、作業再開すっか」
腕まくりをしてやる気十分といったラビ。玲子が自分の落とした荷物を拾おうとしたとき、物凄い悪寒が背筋を走った。
『なに? …!』
胸がざわつき、嫌な予感がした。
「アクマが来る!」
頭上の方からアレンの声が聞こえ、その先を見てみると空を黒く染めているアクマの大群が近づいて来ていた。
「なんて数なの!」
その大群は段々と姿形を写し、ようやくアクマの一つ一つが確認できる。そしてなお近づいて来る。
船を襲うものだと思いイノセンスを発動させアクマに攻撃を仕掛けるが、そのアクマ達は船を通りすぎていってしまった。
「うあっ」
「アレン!!くそっ、伸…」
《アー》
アクマにさらわれたアレンを追おうとしたラビは一瞬の隙が出来てしまい、背後をアクマに取られてしまった。
『ラビ!』
「大丈夫!」
ラビはアクマに挟まれ身動きがとれずにいた。一つ一つ破壊しているラビに参戦しようと玲子も武器を構えようとしたときだった。
《ようやく隙見ーッケ》
目の前に立ちはだかるアクマはそう言って玲子を脇腹をくわえるようにして掴む。
「玲子!!」
『ラビ…っ!』
お互いに手を伸ばしたが、その手は触れることはなく玲子はアクマさらわれてしまった。
空中でアクマにしっかりと掴まれ、どこかに連れていかれていく。
船からは大分離れてしまった。
『離せっ!』
《もうしばラく》
アクマはあと少し待てと言うと一気に加速し、ある竹林に降りた。
地に足がついた玲子はやっと体を自由にされ、アクマとの距離を取る。しかし、アクマは攻撃を仕掛けてくる気配はない。それどころか、一歩下がり玲子との距離をさらに取った。
《ご命令通り、連れテきました》
アクマは膝を折り、地面につけ姿勢を低くする。
「ご苦労さん。もう下がっていいよ」
その言葉を聞くとアクマは一目散に空へ飛び上がり姿が見えなくなっていった。玲子はアクマが消えた事より、この声の主に驚き、声を出せずにいた。
「久しぶり、…ってほどでもねえな」
サクサクと葉を踏み近づいて来る。
教団側からするとアクマよりも危険だとされる、
『…ティキ、ミック…』
「お。覚えてくれてた?」
ノア。
ニカっと笑いさらに距離を縮める。ティキは返事を聞きに来たという。
「今改めて聞くけど、こちらに来るつもりは」
『ない。あたしは仲間を守らなきゃいけないんだ』
大切な仲間を人を、敵であるアクマやノアから。そのために授かった力だ、裏切りに使うつもりは毛頭ない。
「そっちにいると危ないと言ってもか?」
『その根拠は?』
それは言えないと首を振るティキ。
『何の理由も無しに、知らない人には着いていかない主義なんだ、あたし』
「子供かよ…」
ふはっ、と笑ったティキは次に考え込むように腕を組む。そして結論が出たのか、スッと顔を上げ玲子と視線を絡ませた。
「理由を作ればいいんだったな?」
『?』
「今その理由を思い付いた」
つ、と空に指を指しながらティキは言った。玲子はつられるようにその指の先を見る。
「あそこに咎落ちがいる」
『!』
そこには空を赤く染め上げている巨大な姿が浮かび上がっていた。
「お前がいるって事は、お前のお仲間もこの付近にいるって事だろ?」
そいつらをあの咎落ちに焼き払ってもらってしまえば、お前は自分で言っていた「守る」ってことが出来なくなる。そうしたらお前がそちらに執着する理由はなくなるだろ?
「どうかな?」
自分の考えを打ち明け、玲子の反応を見る。
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