story
□デリート
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『あっははは!も、や…、お願いだからっ…あ!』
(ホントにお願いします。勘弁してください!もう無茶しないからー!)
玲子の思いが伝わったのかラビの動きは止まった。しかし、止まっただけで抱えられている格好は変わらなかった。
ついでに下ろしてもらえると嬉しいんだけど、とラビを見上げる。
『ラビ?』
恐る恐る声をかけてみるとピクリと反応を示し、こちらを向いた。
あれ。
『…ラビ、顔真っ赤』
「…っ!?」
そう言われたラビは顔を反らし、誰のせいだよとぼやく。
誰のせいって
『あたしのせい!?何で?それ酷くない?』
「なっ…!玲子が変な声出すのが悪いんだろ!?」
『へっ…、変な声なんか…』
出してない。
ラビは顔を反らし玲子を降ろし向き合う形で立たせた。
「…まあいいや。さっきの声は誰にも聞かせんなよ?」
『え、あ、うん』
むしろ聞かせない方がいい。そうぼやくと、まあいいさ、と苦笑を浮かべるラビ。
…さっきの声といわれても、いまいちピンとこないけど。まだ顔が赤いのを自覚してか、ラビは両手で顔を隠して「はぁ…」とため息を着いた。
「…本来の目的忘れてたさ」
『目的?』
真剣な眼差しを向けてじっとこちらを見つめるラビ。ラビが言いたいことは大体見当がついている。
おそらくラビは前回の事を聞きたいのだと思う。林の中でアクマと交わした会話。
ラビに聞こえていなかったとしても、自分の顔色は良くなかったわけで。イノセンスの使いすぎとはいえ、気にはなるだろう。
なんだかんだあって聞きそびれていたと、横目でチラリとマホジャを見ながらラビはそういった。
「…玲子」
『…あの、ラビ。昨日の夜心配してくれてありがとう。…その、ごめん』
ラビから視線を外す。
直視できなかった。
ラビの目はなんでも見透かしていそうな感じがして、少し不安になった。だから、目を合わせられなかった。
あのアクマとの会話を聞かれていたら、ここに居て良いのか分からなくなる。それに、あのアクマが言っていた事についての確信がまだ掴めていない。分からないことを言って無駄な事で傷つきたくないから。
自己防衛のためにだんまりを決め込むなんて、なんて卑怯なんだろうとは思うけど。
「いや、無理っぽいなら言わなくてもいいし…」
『…ごめん』
そういって俯くと、無理矢理ラビに顔を掴まれて上へ向かされた。
「うじうじすんな!らしくねぇ!
無理なら無理ってはっきり言え。追究しようなんか思ってねぇさ」
『ラビ…』
「ただ、イノセンスの使い過ぎをもちっと考えてほしかっただけさ」
お前危なっかしいから、と玲子頭をぐしゃぐしゃにして笑うラビ。
心配かけないようにとか、仲間を守るためにだとか、無理をして潰れたら元もこもない。元帥なんだから、エクソシストを使いっぱにしても許されるんじゃないか?
ラビはそう言った。
「だからもちっと肩の力抜いてもいいんだぜ?」
玲子を落ち着かせるように優しく頭を撫でているラビからは、温かな温もりが感じられた。
その温かさに玲子は目を閉じる。
ラビの優しさに甘えている自分がいる。ラビはいつも甘やかすから、甘えないように強くなろうと思っていた。それなのにラビはこんな調子で心配してくれたり、優しくしてくれたりする。
その優しさが、たまにだけど胸が苦しくなる。
理由はわからないけど、その優しさが嬉しかったり、辛かったりするのは事実。
『…あたし、怪我とかイノセンスの使いすぎとか気をつけるから、ラビも怪我、しないでね…』
守りたい、と願うものからの優しさは嬉しくあり、辛い。それは、自分が守りきれていないから、自分の事も守れていないからなのだと思う。
「俺のことは心配すんな!玲子は無茶しなきゃ、俺は安心してられんだからさ。
今度こそ守るから」
『…ありがとう…』
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