□明ける
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喜びの余韻が残る空間。皆が喜びを分かち合い、そして元の居場所に戻りつつある。静けさを取り戻しつつあるそんな中、柩を前にしてクロスは笑っていた。


「…あんなに驚くとはな」


柩から起き上がらせた時、キョトンと目を見開いていた玲子。そして、目が見えると知った時、涙を浮かべていた。
クロスは、玲子を見ていて飽きない奴だと笑っていたのだ。

「アクマ化」
クロスはそれを防ごうと、あの剣で貫いたのだ。あの剣には、あらかじめクロスの魔術がかけられており、ダークマターが強く存在しているところを貫けば浄化出来るようにしてあった。

心臓は傷つけることなく、ダークマターにしか効果がない。そういった魔術の剣。

だが最悪にも、玲子のダークマターを取り除くことは出来なかった。予想以上にも複雑に絡み合っていて、ダークマターを取り除こうとすれば心臓まで傷つけてしまう。

教団襲撃の際、焦って最後に行った同化が心臓にまで達してしまったのだろう。
時期を早めたというのはこの事だった。

根が深く張っているダークマターにクロスはこの時、とっさに判断した。アクマの血を吐き出さるということ。



体中を巡っていたノアの血や、アクマの血は、心臓を貫いた時に吐き出させたから濃度はかなり薄くなっているだろう。
ダークマターに侵食された体液の濃度を薄め、血を吐き出させることで人間の血液濃度を普通に近付けさせた。魔術を施している剣は、心臓を傷つけず、血だけを吐かせた。

致死量を超える血液が検出されたのは、玲子の体内に元々あった人間の血にプラスされたアクマの血を吐かせただけなため、人体にはそう負担は掛かっていなかった。

だが完全に抜けきった訳ではない。同化を行えば、また再び濃度は高くなる。だから同化は今後一切してはならない。同化を行えばまた眠っているアクマの血が濃くなり、残っているノアの血も動き出す。

アクマ化するにはその二つの血が起因することは確かだ。血を濃くするのを、同化が助けているのだ。


アクマの血やノアの血が薄くなった今、イノセンスは通常通り使えるだろう。目が見えるようになったことが何よりの証拠。

もしくは、以前よりイノセンスの力は強くなっているかもしれないという可能性も低くない。

ただ、不安要素はまだまだある。もし、微量のダークマターにさえ強くなったイノセンスが反応したら、玲子の身体はどうなるだろう。
また拒絶反応を起こし、盲目になるか、胸の傷が開くか。もしくは、それ以上の最悪な状態になるかもしれない。

不安要素をあげればきりがない。ただ、最悪の事態を避けるための手配がいる、と言うのは少なからずとも必要だという事は確かだった。


「…世話のやける姫だな」


歪んだ空気は戻りはじめることが出来るだろうか。
クロスはクッと笑いその場を後にした。





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あとがき

こんにちは、八雲です。

やっと、書けました…!
今回は比較的明るい感じになったかな、と思います。
クロスによって処刑された夢主は、一時的な仮死状態。しかし蘇るのは書き直したんです。本当ならその夢主は棺ごと消える、という物だったのですが流石に前と同じ事の繰り返しは飽きるかと思って書き直ししました。

以上、裏話的なものでした。
また、今回の人体の血液量は医学的根拠はありませんので、誤解のないようお願いします。
読んでくださりありがとうございました!
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