story

□見えないイト
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どうやらこのイノセンスは同化を行っている時は弱い金縛りしか与えられないようだ。


コムイに試してみた所そうだった。(※コムリン騒動参照)


『まあ、少し動きを制限できるだけ良いか』


前は遠距離向きだったため、接近戦には慣れなくてはならないが、それも仲間を守るため。


雑魚は石化、灰化、一掃で片付ければいい。


一通り全て作り上げていくと玲子はふと気付いた。


『…一掃って、そのまんまじゃん』


自分が付けた名前に何と無く納得がいかない。


何の捻りも無い名前につまらないと感じた。


『新しい名前にでもするかな…』


一掃の攻撃の効果について考えてみた。


一掃は全てが無くなって消える技。

石化や灰化とは違って姿形、物質自身が無くなる。

無くなる…。


『…あ、莫(バク)が良いかも』


もともと莫という漢字には"無い"という事を指し、また虚しいという意味もある。


気に入るような名前を付けられた事に玲子は喜び、一掃、もとい莫を作り上げた。


テニスボール大の黒い球体"莫"をいくつも作り上げ、自分の周囲を取り囲んだ。


『うわ…、こんなに作れるようになったんだ、あたし』


以前と比べ物にならない程、イノセンスの力は格段に上がっている。


疲労がまるで無い。


これがシンクロ率が上がったお陰だろうか。


大きさもバラエティーに富んでおり、ビー玉サイズから大玉サイズ、それ以上の大きさも作れるようになっていた。



これだけ力を付ければこの世界で生きていける。


皆を守ることも出来る。


自分が力を付ければ付けるだけ、仲間が傷付く事は少なくなるだろう。



『―――…頑張らなくちゃ』


固く決意し、玲子は任務遂行へ行った。

















「何で私が狙われなくちゃいけないの…?
私が何したってのよぉぉ〜。
もう嫌、もう何もかもイヤぁぁ〜」

「く、暗い…」

「ずっとああなの」


時計を拭きながら、自分が狙われている事を知ったミランダ。

ぶつぶつと呟いては負のオーラを醸し出し、怯えていた。


そんな姿のミランダにアレンは怯えるのだった。


「ミ、ミランダさん」

「私は…何も出来ないの!」


そろりと後ろから声を掛けてはみたが、反って怯えさせてしまった。


「あなた達すごい力を持った人達なんでしょ!?だったらあなた達が早くこの街を助けてよ!!」


無責任な事を言って辛くなるのは自分だというのに。


ミランダは自分の力では何もできないと思い込んでいる。


自分が何かしたところでまた失敗するのだから。


それでもこの街の異変は何とかして欲しい。


ミランダは今、人に縋る事しか解らなかった。



「はい」


ミランダの背に、アレンはしゃがみ込んで手を合わせている。


嫌な顔せずに。


「助けます。でもそのためにはミランダさんの助けが必要なんです。……僕達に手を貸してください」


何もできない自分に助けを求めるなんて。


どうしてこんな私を頼ってくれるの?

何の役にも立たない私を。

どうして無責任な事を言った私を助けてくれるの?

他人なのに。


何で…。



……コチ…コチ……コチ…



コチンッ!





「ミ、ミランダさん?」


すくっと立った背の高いミランダを、しゃがんでいるアレンは見上げる。


ミランダはアレンを気にする事なく、というか目に入っていないようにベッドに潜り込み、即眠りについた。


「寝るんですか!?」


ミランダの奇妙な行動に突っ込まずにはいられなかったアレン。


リナリーは変な行動を取ったミランダの様子が気になった。


不安になり辺りを見渡すとミランダの部屋に異変が。


「アレンくん!!」


部屋の異変に気付いたリナリーはアレンを呼ぶ。


振り返ったアレンが見たものは、宙に浮く時計の姿。


様々な形をした時間が街町中に浮かび上がっていた。





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