□別れの儀式
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そうであればこの現象は人為的に行われているものとして考えても良いだろう。そう考えると、この現象を起こしている人物は誰だ、と言うことになる。

が、それは考えるまでもなく、簡単に特定の人物を絞り込めた。

この霧を発生させているのはクロスなのだ、と。
なぜなら彼が来るまではこのようなことは起こらなかった。彼、クロスがこの空間に入ってきた瞬間に、また、指を鳴らしてからこのような状態になった。

だから少なくともこの現象にクロスが関係していると考えてもおかしくはないだろう。

しかしなぜ霧を発生させたのかは謎だった。何か秘密があるのか、と疑ってしまう。霧を発生させるその意味を考えるが、分からない。

すると、急に辺りが明るくなった事に気が付いた。

霧が辺りを包み込んだかと思えば、次には棺が赤く燃え始めていたのだ。霧が発生している状態なのに、物が燃えるなんてそれこそありえない。

ごうごうと燃え盛る炎。霧があるならこんなに盛んに燃えるはずはない。

頭の何処かで冷静にそう考えていた。

赤から黒へ、炎の色は変わる。その色を見て、これは異常だと背筋が凍った。
思考とは反対に身体は反射的に勝手に動いた。慌てて棺に駆け寄り炎を消そうと試みるが、そう簡単には消えない。どうしたらいいのだ。


…この黒い炎を起こしているのが、クロスだとしたら?


ふと思い付いた思考は咄嗟に身体を動かすには十分だった。
一刻も早く止めさせなければ。棺の中にいる玲子が、燃えてしまう。クロスを止めなくてはと思い駆け寄れば、クロスの意外な行動に目を疑った。

棺の炎が燃えているところに自ら近付いていくクロス。

「貴方も燃えてしまいます」、と誰かが止めてもクロスはその手を払いのけ、進む足は止まらなかった。それどころか一度離れた玲子の所まで近づいていく。


とうとう棺の前までやって来たクロス。火傷どころでは済まされないだろうと誰もが思っていた。

しかし、


「コイツは死んだ。これからは新しい時間が始まる」


そういって棺の中にいる玲子を抱き起こす。燃え盛る炎はなぜか玲子を焼き付ける事はなく、棺だけを燃やし尽くすと徐々に鎮まり消えていった。

不思議な光景が広がる中、そういう彼は玲子をあの炎から抱き起こしたというのに、火傷一つなく無傷だった。






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あとがき

久々過ぎて何が書きたかったのか思い出すのに苦労しました。しっかし暗いお話だなぁ。しかも引きずってるし。またもや中途半端!

さて、次回はどうなる!

読んでくださりありがとうございました!
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