□別れの儀式
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ゆっくりと、その空間と空間を隔てていた扉がガチャリと開いた。光が差し込み、部屋に外の明かりが訪れる。

入って来た人物はカツカツと足音を立て、柩に近寄って来た。


「…なんのマネだ、こりゃ」


その柩を見て、赤髪の男は言った。柩の中にいる少女を見て眉間にシワを寄せる。
花に埋もれ、胸の上で手を組まされている玲子。周りは啜り泣く声が所々で聞こえる。


「…趣味悪ィな、お前ら」


この悲しみで包まれている空間で、クロスは一人鼻で笑っていた。


「葬儀ごっこか?」

「…!」


大層な用意だな、と笑うクロス。


「そいつに棺なんて必要ねぇだろうが」


今すぐやめろというクロスの言葉にカッときたアレンは、あろう事か、師であるクロスを殴りつけてしまった。


「…彼女を、侮辱しないでください!いくら師匠でも許しませんよ!」


悔やんでも悔やみきれないアレン。ぐっと拳を握り締めていた。
クロスはその腕を取り、ポイと投げた。急な行動により、受け身を取れなかったアレンはそのまま背中を地面に叩き付けられる。


「っ…、何するんですか!」
「それは俺の台詞だ。喚くなうるせぇ。侮辱してんのはてめぇらだろうが」


クロスの言っていることが分からず、首を傾げる。クロスの鋭い視線に怯みながらも、その視線は外そうとしなかった。


侮辱している?一体何を侮辱しているというのだ。

クロスはさらに柩に近づきその中にある花を手に取った。そしてその花を玲子に髪飾りのようにして差し込む。


「コイツがどんな思いで戦っていたか、分かるか?」


そう言って鋭い眼を向けて問うクロス。その言葉に何も返せずにいた。
どんな思いで戦っていたか、なんて


「お前らのためだろうが。自分が消える事を分かっていたから、最後の最後に命散らしてまでレベル4と戦ったんだろ」

「…!だったら、尚更っ」


尚更、送ってあげなければならないだろう。そうは言うが、なかなか本心から送ってあげることはできないでいた。

現実を受け入れられない。
もしかしたら、この中途半端な気持ちでいたのを見透かされていたのかもしれない。


クロスは少し棺から離れ、何をするのだろうかと皆の視線が集まる。

その中でクロスが指をパチンと鳴らすと、辺りは薄暗くなり、闇が訪れた。その闇に肌寒い感覚。湿り気を帯びていると感じ、これは霧だと判断した。

しかし、この密室で霧が発生するなど不可能なはずだ。教団の中で自然に霧が発生することなど有り得ない。




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