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□別れの儀式
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処刑台には致死量を超える血液が残されていた。生きている可能性はゼロに近い。そんなこと、言われなくともこの状況を見れば分かる。それでも、信じたくない。
「(僕は、また…)」
また、大切な人を失ってしまったのか。それも、自分の手で、過去と同じように。でも一つ、過去とは違う。
蘇らせようとは思わなかった事だ。蘇らせたら、彼女の魂は本当にアクマに乗っ取られてしまう。あんなにアクマ化することを嫌がった人だから、それはしてはいけないと思ったんだ。
蘇らせようとは思わない。また伯爵の思い通りにはならない。魂を救済するのは、エクソシストの役目だから。
でも、やっぱり後悔ばかり残っている。自分は顔を合わせても、逸らしてばかりだった。それが彼女にとって最善だと思っていたから。
「(謝ることさえ、出来なかった)」
後悔ばかり。逃げてばかりだった。
悔やんだって、彼女はもう戻っては来ない。
中央の判断とルベリエの合意により、処刑は執行され、彼女は戻らぬ人となってしまった。
こんな事が、本当にあってよかったのだろうか。この事態を回避することは出来なかったのだろうか。
考えても分からない。考えた所で事実は変わらない。
どれだけ神様がいたらと願っただろう。この事実を覆して。あの人を返してと、どんなに願っただろう。
でも、神様は耳を貸してはくれない。
こうなる前に、救うことは出来なかったのだろうか。
「…どうして僕は…」
後悔しか知らないのだろう。
どうして、どうして思うように行かないのだろう。
どうして
玲子さんを失わなければならなかったのだろう。
救いたかった。失いたくなかった。大切な人だと思っていたからこそ、彼女を守ってあげたかった。
それでも、すべては僕のせいだったのだ。
失った時間は、動き出すはずがなくて、彼女はただ静かに瞼を閉じる。
…こんな事ってないよ。
ひど過ぎるよ。
大切な人を、どうして奪うの。
連れていかないで欲しかったのに。
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