□閉ざされた瞳
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「…いやぁぁぁああああ!!!」







貫いた剣を引き抜き、剣に滴る血液。ほとばしる血液はパタパタと床へ打ち付け跡を作る。
剣が引き抜かれると同時に玲子は倒れる。ドサリと崩れ落ちた身体からは、血液の円が徐々に広がっていく。



「いやぁあっ!玲子!!」


駆け寄るリナリー。それを止める人は誰もいなかった。
リナリーが玲子に近付くのを見て、はっと我に返った。目の前の事を理解しないうちに、反射で体が動く。

見てる場合じゃない。


「玲子…っ!」
「玲子さん!!」


玲子を抱き起こすリナリーと、その処刑台に集まるアレン達。
まだ息はあるか。希望を持ちつつそれを見に行った。生きていてほしい。かろうじて、生きていてほしいと願う。

だが、


「…ッ」


玲子を抱き抱えたリナリーは、気付いてしまった。





死ん、でる。






ことり、と静かに落ちた手。まだ温かいのに、ひどく冷たく感じる。それは、生きている感触ではなかった。
呼吸も、脈も、全ての時間が止まっていた。



「そんな―…っ!」



嘘だ…。
嘘だ!


「うわぁぁぁあああああ!!」


嘘だと言って。

こんなこと、真実にしないで。

お願いだから、返して…!



「どうして…どうして玲子が処刑されなきゃいけないの!?どうして殺されなきゃいけないの!!」



仲間思いの、優しい人。



「…他にも、手があったかもしれないのに…っ!」



もう、戻らない。

返事も、なにもない。

段々と体温が抜けていく。

力のない身体はずしりと重い。



「…冗談、キツイさ…」


誰もがこの事を受け入れようとしたくはなかった。アレンも神田も、ラビも、皆。
なんで、とアレンは疑問ばかり浮かんで来る。アクマ化は確かに危険だ。だからといって、他に方法がなかったのだろうか。必死に探せば、あったかもしれないのに。

しかしこの出血では、生きることは困難だろう。きっと致死量に達しているにちがいない。


「…これで満足か、ルベリエ」


台から降り、ルベリエに近付くクロス。


「ええ」


危害を及ぼす者がいなくなり、ルベリエはスッキリしたのだろうか。すれ違うクロスに「お疲れ様」と言いその場を後にした。

クロスはルベリエの背中を横目に見ると、台の上で泣くリナリーから玲子を離した。


「血で汚れる」


リナリーはそんなのどうだっていい、と首を横に降った。クロスは冷静に離れろとリナリーの腕を掴んだ。


「いや…っ!」

「離れろ。そいつの血が何なのか、知ってるだろ」


アクマの血を持っている。感染する可能性がないわけではない。血が皮膚を経由して感染するかもしれない。
クロスは無理矢理リナリーを玲子から引き離す。それに抵抗するリナリー。しかし、それは叶わなかった。


「コムイ、コイツを」

「…わかりました」


クロスに命令されるコムイは、玲子を担架に乗せどこかへ運んでいく。


「何する気?!」


慌ててコムイを止めに行くリナリー。下を向いて唇を噛み締めているコムイの変わりに、クロスが言った。


「拭いてやるんだよ」


血まみれじゃ、可哀相だろ。


その言葉は、真意を知るには分かりやす過ぎた。






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