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□閉ざされた瞳
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いくらリナリーが叫んでも、コムイにはどうすることも出来ない。
ざわめく人は多くなる。その声には、なぜだという疑問の声や、やはりそうか、と言ったものも少なくなかった。
教団に広がった不名誉な噂は、確実に人々の耳に入っていたのだ。
「こいつを処刑する」
ルベリエと元帥が集められた部屋でクロスははっきりと言った。その声が響く。クロスの急な言葉に、どう反応し、何を言えば良いのか分から無くなっていた。
「待ってくれ。彼女を処刑するってどういうことだい」
ティエドールはクロスの言葉に疑問を抱いた。
処刑する意味が分からないのだ。ティエドールからすれば、彼女のイノセンスがなければもっと犠牲者は多かっただろう。止血も手が回らず、死者も多かったかもしれない。教団がこんな壊滅的な状態の今、彼女のイノセンスは貴重であることは確かだ。
だが、そのティエドールの意見にクロスも反論する。
それはぎりぎりの所で自我を保っていられたからだ。こいつはもうもたない。もてるはずがない。もしまた目の前にアクマが現れれば、自我を失う可能性は以前より高くなっているはずだ。いつ危害がこちらに向くか、予測出来ない状態だった。
ルルベルの血を受け、ダークマターはさらに濃くなった。侵食はもう抑え切れない所まで来ている。
「教団を守るにはそれしか手がない」
一人の犠牲で、たくさんの命が守れるなら、仕方のないことだ。クロスは冷たくそう言い放った。
クロスの発言に反論が出る中で、ルベリエただ一人はその答えに同感していた。
「イノセンスを失うのは惜しい。だが我々教団の驚異となるならやむを得ない」
「…そんなっ!」
コムイも処刑は反対だったが、クロスの意見にルベリエは承諾し、玲子の処刑が決定されてしまったのだ。
「…師匠っ!!」
処刑台の上にいる玲子。告げられた言葉。エクソシストは皆、信じられないと驚きを隠せなかった。アレンもそのうちの一人。
人混みを掻き分けてついたと思ったら、これはどういうことか。
「それはお前が一番分かってんだろ。アレン」
クロスの言葉にアレンは言葉を飲み込む。クロスが言いたい言葉が何なのか理解できてしまったからだ。
「決定事項だ。今更変えられん」
クロスの冷たい言葉に、怒り、自分のふがいなさでアレンはただ睨むしか出来なかった。
「…クロス元帥、」
「ああ」
コムイがクロスに合図をすると、クロスはその処刑台へ上っていく。クロス直々に玲子を処刑するというのだろう。歪んだ剣を取り出し、玲子に突き付けた。
そして、ざわっと騒ぎ出す人々。
その光景を見て、コムイの声が聞こえなかった者達も、ようやく事の重大さに気付き処刑が行われるのだということを理解する。
その光景を神に祈る者もいれば、諦めてただ見ているだけの者もいる。それはファインダーや科学班に多かった。
「せめて、最後くらい言いたい事を言わせてやってくれないか」
「その必要はない」
ティエドールの声さえ、クロスは聞く耳を持たなかった。
「悪く思うなよ」
覚悟、とは何か。
そんなものを考える暇さえなく
玲子は、クロスの手によって貫かれていた。
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