2
□闇雲
3ページ/6ページ
『…っ!』
イノセンスをさらに解放した途端、心臓を締め付ける力が強くなった。
血を零した所から玲子は一体の一角獣を召喚するとそれに跨がり、レベル4に向かってかけて行った。
きっと、あのレベル4が破壊される頃、自分も居場所を無くすのだろう。そうなるなら、せめて、この手で皆を守りたい…。
「玲子ちゃん!!」
叫ぶコムイの声にも、振り返る余裕すらなくなっていた。
黒い影の一角獣に跨がり、玲子はレベル4のもとへ向かう。レベル4はリナリーの頭を足蹴にし見下している。弱々しく腕を伸ばしてイノセンスを求めて、頭からは血が流れていた。
『…レベル4』
タン、と影の一角獣から降りる。レベル4は、パッと玲子の方を見る。
『その足、退けなさい』
〈くいーん?〉
ゆっくりとレベル4との距離を縮める玲子。
異様な雰囲気の玲子に違和感を感じ、何をする気だと視線が集まる。
「…玲子…」
リナリーは霞む視界の中て、かろうじて玲子の姿を写した。レベル4に退けと命令するが、リナリーから離れようとしない。レベル4は、何故どかなければならないのか分からないようだった。
退けないか、と再度言ってもレベル4はリナリーを離すことはなかった。
玲子は仕方ない、とレベル4に向かい構えた。
「…玲子?」
ふと、嫌な予感が過ぎるリナリー。それは倒れている皆も、同じ気持ちだった。
『どかないなら、退かすまでだ』
ダンッと踏み込みレベル4に一撃食らわす。玲子のいきなりの攻撃にレベル4は驚き、後ろへと躱す。だがその躱した先には、あらかじめ作っておいた莫が待ち構えていた。イノセンスで莫を作り四方を囲む。
〈くいーん、なんで〉
信じられない、とレベル4は言った。莫に触れたレベル4は、上腕に風穴が空いた。玲子はその光景を嘲笑うかのように佇んでいた。
『…何でって、何が?』
強く足を踏み締め、一歩、また一歩とレベル4に距離を縮めていく。玲子の背筋の凍るような殺気に怯むレベル4は、ジリジリと後ろへと後退る。
周りには、レベル4が生まれる前に破壊されていたアクマの残骸が散らばっている。それらを踏み、クスリと笑う玲子。その笑みは狂気や嘲笑うようなものでもあり、
『来な。相手してやる』
諦めに似たようなものでもあった。
ジリ、と玲子との距離を取るレベル4。
レベル4に足蹴にされているリナリーを力ずくで助け出した玲子。リナリーはその玲子の姿を見上げていた。
「…玲子…?」
リナリーに背中を向け、レベル4を向いている玲子。リナリーの声にゆっくり振り向き、大丈夫?と声をかけた。
「私なんかより…玲子の方が…」
傷が開き、血が流れているのがわかる。心配するリナリーに、自分の心配をしなさいというように玲子はフルフルと横に首を振った。
『リナリーが無事なら、それでいい…』
アレンもリナリーを庇いレベル4へ挑むが、わずかに敵わず遠くへ飛ばされてしまった。コムイの所に飛ばされるが、イノセンスで無理矢理身体を動かし、またレベル4に向かっていく。
「アレンくん!?」
コムイは傷だらけのアレンを止めようと叫ぶ。
リナリーは、玲子を見上げ、行かないでと縋った。
嫌な予感がしてならない。アレンが怪我をしていることだってそう。玲子の身に何か起きてしまうのではないかと胸騒ぎがしたのだ。
「行っちゃだめっ…」
『…。大丈夫。心配しないで』
「違うの…!」
.