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□叫び
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でも、今回は自分の力を恐れているだけの話ではない。
伯爵に操られ、正気さえ失う。そして今まで守ってきたものを自分で壊すのが怖いんだ。
分かってる。けどな
「なんで逃げる」
「ユウ…」
過去に一回逃げて、また逃げるのか。
「何で一人で抱え込む。何で人に頼らねえんだよお前は…!!」
信用できる仲間がお前にはいるんじゃないのかよ。何でもかんでも一人で背負うなよ。
どうにもならないことじゃねぇだろ。コムイだっているんだ。原因の解明や、それを止める手立てだって見つかるかもしれない。
「一人で出来ないことだって、他人を巻き込めばどうにかなるかも知れねぇだろ…!」
諦めんなよ。
止められないかもしれない。けど、同じくらい止められるかもしれないだろ。
「だから…泣くな」
ざわ、とまた木々が揺れた。
「…ユウの言う通りさ」
ラビは腕の力を緩めて玲子を上に向かせる。
「頼って良いんだよ。一人じゃ出来ないことも、仲間がいればできる事だってある」
頑張ろうとするのは構わない。でも、それが空回りしていたらいつまでたっても効果は発揮できない。
玲子は少し頑張りすぎさ。
…それから
「やせ我慢しなくても良いんだからな」
ユウは泣くなとか言ってたけど、それはダメさ。だってコイツ、今の今まで我慢してきたんだ。吐き出させてやんなきゃ、辛くなる一方さ。
「…ずっと我慢してきたんだろ?思いっきり泣けばいいんさ」
嫌だったこととか辛かったこととか、子供みたいに吐き出したっていいんだぜ。
だって、お前は今まで頑張ったもんな。
『…ふっ…』
堪え切れなくなったのか、涙はまた流れはじめた。
ラビはいつも自分のしたいことをさせてくれる。無理しなくていいとか、頑張りすぎるなとか、堪え切れなくなるといつも吐き出させてくれた。
それにいつも甘えてる自分。
そして今回もまた甘えてる。
『…目が、見えなくなって…』
泣き出したら止まらないし、言い出したら止まらない。
『…どう、したら分からなかった。…アレンから傷つけられた時も、なんでって、…』
怖かった。目が見えないということ。アレンから攻撃されたということ。
本当はすごく辛かった。
でも、その時自分が強かったら、そんな思いはしないで済むかもしれない。そう思った。だから、強くなろうとした。
強くなる一身で、泣きたいのを我慢した。強くなれば泣かなくて済むかもしれないから。
強くなろう、強くなろうとしてきた。
でも、もう無理。
『…だって、元々強くなんかない…。皆、強い強いって言ったけど、あたしそんなに強くないもん…!』
強い心なんて元々持ってない。
もう無理。ダメ。
ずっとずっと怖かった。
泣きたかった。
戦いを止めたかった。
投げ出したかった。
でもそれはダメだと思って、やっぱり頑張らなきゃって思って続けてきたのに。
それなのに、アクマなんだと言われて。じゃあ、これまで自分がしてきた事は無意味だったの?
強くなろうとした事は間違いだったの?
『もう、…どうしたら良いのか分からないよ…っ!』
玲子はまた、ラビの腕に縋って、これまで泣きたかった分の涙を枯らすまで泣いた。
*****
‐同時刻‐
中央庁特別監査役、ルベリエによる会議が開かれていた。
その内容は、アレン・ウォーカーについだった。元帥や室長、支部長などの権力者が集められ、報告会及び検討会議であった。
「君がそんなに手こずるとはね。怪我の具合はどうだクロス元帥」
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