story
□灰と涙
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「エクソシスト様!」
『ちぃっ!!』
〈ギャハハ!バーカ!〉
イノセンスを発動させた玲子。
これで相手の動きを止められると思ったら、人の形をしたアクマは平然と動き回る。
イノセンスの効果が効いていない。
アクマは一旦引き、攻撃を仕掛ける機会を窺っている。
攻撃から見てまだレベル1のはずなのに、人の形をしていた。
レベルアップの前段階なのだろうか。
〈キャハハ♪混乱してル♪〉
アクマの声だけが響き、つと汗が流れる。
どこにいるのか全く分からない、姿が見えない。
じりっと砂を踏む音がした。
「エクソシスト様!!」
『うわっ…!』
キースが駆け寄り玲子を突き飛ばした。
『…キ、キース』
「危ないところだった…。あの鳥が…」
キースは空に羽ばたいている一羽の鳥を指差した。
旋回を繰り返し、玲子目掛けて飛んで来た。
『なっ…!?』
その鳥はくちばしが剣に変わり玲子を襲う。
玲子は半身を捻り躱した。
〈チェッ、躱さレタ〉
鳥が喋った。
まさか、あれがアクマ?
玲子はホルターからクナイを取り出し標的に向かって放った。
クナイは鳥に向かって真っ直ぐ飛んでいく。
『…え』
クナイは鳥を透り抜けて空へ消えていった。
普通の鳥ならクナイは刺さるもの。
物体の鳥ならば。
『…物体じゃない?』
ということは、
『幻か!?』
クナイの刺さらない鳥なんかいるはずもない。
体を持ち生きている鳥ならば。
〈ククッ、ご明答。アレは僕が見せテル幻。君達の目ニ像を映し出してイるノサ。
勿論僕本体ハ見えなイようニシテるけドネ〉
『…像』
〈悩め悩メ!後でじわじわナブリ殺してヤルヨ♪〉
不気味な笑い声を残してアクマは気配を絶った。
『…像、像か。成る程』
考え込む玲子にしめたとアクマは一気に多くの砲弾を繰り出す。
受ければ致命傷確実の数だ。
仕留めた、ニヤリとアクマは笑った。
『おっと!!』
〈何っ!?〉
玲子は砲弾を避けている。
〈クソクソ!マグレだろ!〉
今度はアクマは移動をしながら玲子に攻撃を仕掛け、四方八方から砲弾を放った。
だがそれも難無く玲子は避けていく。
更に玲子はクナイを構え空に向かって投げる。
空を切るクナイは途中で弾かれ地へ落とされた。
〈クソ!何で居場所が分かるんだ!?奴の目ニハ見えテいなイハずナノに!〉
クナイを弾き一瞬気が緩んだアクマ。
目の前にクナイが迫っている事に気付かないでいた。
〈…ッギャアアァァアアァッ!!!〉
いくつかのクナイがアクマを襲う。
玲子の攻撃を受けたアクマは消えていた姿を現してしまった。
アクマが見えたことで玲子は一気に間合いを責めアクマの懐に入る。
〈…な、なぜ居場所が……!?〉
『さて?何故だと思う?
あんたの能力は透明になり、相手に幻を見せる事。簡単に言えば幻術見たいなもの?』
玲子はクスリと笑った。
幻を見るのはアクマが網膜や聴覚など神経に影響を及ぼしているから。
始めの内はその策略に嵌まっていた。
完全にキースをコピーしていたから。
本物が出てくるという誤算がなければ、玲子は完全に騙されていただろう。
本来なら負けて当然のこの勝負に、勝てる兆しが差し込んだのだ。
"目に像を映し出している"
負け試合の玲子に唯一のヒントとなり、勝因に繋がった。
〈ナゼ居場所が分カルんダ!気配を追ってイルとでも言うノカ?!〉
『神田じゃあるまいし、そんな事出来ないよ』
玲子は横たわるアクマにクナイを突き付けた。
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