story

□灰と涙
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接近戦タイプのアクマとは反対に玲子のイノセンスはどちらかというと遠距離戦タイプ。


タイプ別に見れば圧倒的に玲子の方が不利だ。


イノセンスを発動したところで、また捕まってやられるだけ。


あのアクマを捕らえるにはこちらも接近戦にならなくてはいけない。


『(…どうする?)』


クナイを握り、思考を巡らす玲子。



バチィッ!!!


途端に玲子の身体に電流のような痺れが走った。


イノセンスの眼から神経を伝い脳へ痺れが流れる。




色々な感覚が脳を埋め尽くし、最後には弾けて消えた。


弾ける際に見えたのは、イメージだけだった。


イノセンスをどう扱うかというイメージ。


ちょうどアレンが言っていたイノセンスが神経を伝い新しいイノセンスの使い方を教える、という風に体が自然と動いた。


クナイを構え、アクマへと向かう。


『…イノセンス発動』

〈――…ッ!?〉


玲子はイノセンスを発動させ眼が紅に染まる。


手の甲には電流がビリッと流れる。


何だろうこの感覚は。


脳が痺れて何も感じない。

体だけが勝手に動く。

まるで別人のように体が軽い。

イノセンスを発動させたからだろうか。

ただひたすら、剣を降るってアクマを切り付けている。


視界に入る己の手。


そこには先程まで握られていたクナイはなかった。


変わりに、手の甲から刃のような物が生えていた。







見覚えのある黒い刄。


『これは……』


クナイが、手の甲に同化している。

その手を振るって玲子はアクマを斬る。


〈グッ…ぎゃあァアァあアァ!!!〉


アクマが段々小さくなっていく。


玲子がアクマへの攻撃を止めないからだった。


〈ヤっ…ヤメろ、やめテクレ!!〉


アクマの声も虚しく、玲子の耳には届かない。


無情になり、剣を振るい、アクマを破壊することだけが頭にあるだけ。




―――――楽しイネ…―




『…!!』



頭に、あの声が…。


玲子は我に返り、目の前にあるアクマを見て驚愕した。


ズタズタに切り裂かれたボディ。


切断され辺りに散らばる残骸。


トドメの一撃を入れていた、自分。


ゆっくりとアクマのボディから刃を引き抜いていた。


崩れ落ちる、エディ。


『エ、ディ…ッ!!?』

〈…玲子…〉


玲子はエディに駆け寄り膝を着いた。


何て惨い。

何て酷い。

何て残酷。


そんなアクマの壊し方をした自分に、手が震えた。


さっきの自分はまるで自分では無かった。


見えているだけで、体を動かしていたのは自分ではない。


『エディ…エディ……ッ!!』


〈…ド…ゥしたノ…玲子。泣いちゃ、ダメ…〉


エディは優しい声になっていた。


体が崩壊して、動く事が出来なくっているのに。


優しい声を出して、玲子を呼んだ。


〈玲子、聞いテ…欲シい事、あるんダ…〉


玲子のイノセンスで切り付けた所から徐々に石化していっている。


〈玲子…気ヲ、付けテ…。闇に呑まれたラ、イケない…〉

『闇…?』

〈君は、闇に、足ヲ…踏み入れちゃ、ダメ…エクソシスト、だろウ……?〉


エディは途切れ途切れに言い、玲子はそれを黙って聞いているしか出来なかった。


〈…闇に入れバ、君は壊れテシまう……、だかラ、



伯爵様には、気を付けテ…〉

『!!?』


最後に言うのも何だけど、とエディは付け足した。


〈俺、…玲子を騙した。けど、好きダと言った事ハ…偽リじゃ無い〉


『…っ!?』







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