story
□灰と涙
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元々、この屋敷で目撃されているのは魂と戯れている死神。
という事は、全ての元凶はエディにあった。
〈魂は綺麗だよ。肉体は直ぐに壊れてしまうけど、魂は崩れる事なく残るからね〉
エディは玲子の顔を見て少し、顔が悲しげに歪んでいた気がした。
だがそれも直ぐに戻る。
しのごの言っていられない。
アクマを破壊する事だけに集中しなくては。
玲子は身構えイノセンスを発動させようとした。
『イノセンス発………ッ!!?』
〈させない♪〉
エディは玲子がイノセンスを発動させる前に突進し、玲子の顔面を鷲掴みにした。
顔面を掴まれ足は地から離れていく。
玲子の体は宙に浮いた。
〈君のイノセンスはさっき見たよ。君のイノセンスは相手を見定め、確定しなければ効果を発揮しないようだね?〉
ミシッと顔が、頭が締め付けられる。
『ぅぐっ…!!』
〈あがいても無駄。相手が見えなければ力は発揮されないんだから〉
やられた。
見抜かれていた。
確かに玲子のイノセンスは敵か味方か相手を見定めてからその後を選択する必要がある。
そのために金縛りがあるのだ。
見定めている間の時間稼ぎとして。
玲子はまんまと相手の術中に嵌まってしまっていた。
さっきのレベル1のアクマは様子見の為だった。
『…くっ、そ…』
〈女の子がそんな事言っちゃダメだよ♪〉
締め付けられる中玲子は必死にその手を振りほどこうとした。
だが、人間の力ではそれは叶わなかった。
〈ドコを切れば綺麗な血が流れるのかな?腕?足?それとも胴体?……やっぱりここは首カナ?〉
アクマは楽しそうに笑うだけ。
何処から切ろうか選んでいるのだろうか、その箇所に硬いものが当たる感覚がした。
〈面倒だから全部にしちゃえ♪〉
『――ッ!
きゃあぁああぁぁああっ!!!』
〈キャハハ!綺麗!!〉
アクマは玲子の顔から手を離し、血が滲む光景を堪能している。
幸い、首への攻撃は防いだものの腕、足、胴からは滲み出てくる赤。
襲い掛かる激痛。
出血している所は、脈が打つ度に痛みを発する。
切られた方がまだマシだった。
〈♪やっぱり、切るよりちぎった方が血の滲みは綺麗だよね〉
本当に綺麗な物を見るように、うっとりした声色で玲子を見ているエディ。
〈血は赤くて綺麗だけど、魂は白くてそれはもう綺麗なんだァ〉
その光を見ると落ち着く、と囁いた。
〈さ、次は魂を取ろうね。玲子の魂はきっと綺麗だよ〉
そう言ってぐったりと倒れている玲子に手を翳した。
〈今、薄汚れた人間の体から解放してあげるね〉
エディの翳した手が白く光る。
―…負ける。
このままでは、負けてしまう。
ダメ、こんな所でなんか負けられない。
まだ、やる事は沢山、沢山ある。
こんなに早くに、あたしは
『――死ねないっ!!!』
ドクンッ
クナイを握り締め、叫んだ。
玲子の言葉に呼応するかのように重く、ゆっくりと心臓が高鳴った。
それを合図に玲子の体中の痛みは引いていった。
見れば、体の傷が癒えていっている。
『(―…イノセンスの力か?)』
何が起こっているのか未だ理解せず治癒されていく所を眺める。
玲子の不思議な光景を目の当たりにしたアクマは一旦距離を取った。
〈何だ、その力は!?〉
『――…』
静かだ。
アクマの声などに囚われない程、今の玲子は感覚が研ぎ澄まされ、落ち着きを取り戻していた。
これもイノセンスの力なのだろうか。
『(あのアクマ、どう見たって接近戦タイプだ)』
アクマの形を見て直ぐにわかった。
身動きが取り易いように無駄な装飾が無くコンパクト。
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