story
□嵐ときどき雷
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玲子は思いもしなかった出来事に尻餅をついた。
『ちょっ!え…あの……?!』
「ストライクですわ!ど真ん中!
その息の切れ具合からすると、わたくしの悲鳴を聞き駆け付けてくださったのでしょう?なんて素敵なの!
そしてあの怪物を退治して、わたくしに恐怖感を与えないように微笑し手を差し延べてくださった!なんてお優しいの!!
そして何よりその凛々しいお姿っ!!
全てわたくしの理想的な方ですわ!!」
『えっ、えっ?』
次々と熱く語られ玲子は思考が追い付いてこない。
理解するのに時間が掛かった。
そんな玲子にトドメの一言を女性は発した。
「これは運命!そう!運命!!
あなたはわたくしの運命の人ですわっ!!!!!」
『…………はぁっ!!?』
何でそうなる!
「私と結婚してください!!」
『はあー――――!!??』
イヤ、だがらあのね…。
何でそうなるの!
『あの、あたし女ですっ!!』
「……え」
あ、そうか。
あたしは稀に男と間違えられるし、きっと男と間違えたんだ。
そうだ、そうに違いない。
この女性はきっとあたしを男だと間違えたんだ。
なんだそうか、と一安心したその時。
「そんなの関係ないですわっ!!!」
『へ!??』
女性は諦めるどころか、怯むことさえせず、食いついて来たのだ。
「男だとか女だとか関係ないですわ!あなたは私の運命の人!
ここでの結婚がダメなら同性婚の許されている国で式をあげましょう!!」
女性は熱く語り逃がさんとばかりに玲子の腕をガッシリと掴んだ。
この人、全然人の話聞いてくれないし。
「女の壁なんてございませんわ∨」
…いや、多いにあると思うんだけど…。
玲子は腕を引かれるがまま、その屋敷に招待されたのだった。
…そして、今に至るのだった。
「玲子様!お背中流しますわ∨」
『…け、結構ですι自分でやれますんで』
「まぁ、そんなに恥ずかしがらずに、さぁ∨」
無理矢理着ているものを剥ぎ取っていく。
この状況を切り抜けるにはどうしたら良い?!
紳士的な言葉の一つでも吐いてみるか?
アレンのようにうまくいけば良いのだが。
『あの、女性の方からお風呂に誘うのははしたないと思うんです。ですから…』
もう追いかけないで下さい、そういう意味も込めて言ったが効果は全くなし。
「まぁ、そんなに照れなくても良いんですのよ?これから夫婦の溝を埋めると思えば」
この発言に玲子は固まった。
『…(そういうのがはしたないんだって)』
なぜ気付かないのだろう。
アレンの真似をして言ってみたがダメだったから、ラビの真似をして言っても同じ事なのだろう。
なら、神田の真似でもしてみるか。
直球の言葉なら分かってくれるかもしれない。
けど、相手は女性だ。
傷付くかもしれない。
けれどこのままでは自分の身が危ない。
キツイ言い方になってしまうがやむを得ない。
『…チッ、おい』
ああ、うまく舌打ち出来なかった。
「…玲子様?」
『お前いい加減にしろ。欝陶しいんだよ』
遂にいってしまった。
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