story
□嵐ときどき雷
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「僕がここに調査をしに来た時、アクマはこの屋敷を荒らしていました」
『え?』
調査?
「情報を教団に報告しようとした時に、運悪くアクマに無線を壊されてしまって…」
『え?え?』
教団に報告?
「それで仕方なく、せめて一人ぼっちになってしまったエディを守ってあげようと、僕はここに残ったんです。それで…」
『ちょっと待って!キース教団とか報告とか言ってるけどそれって…』
「はい?それが何か?」
『あなた、教団の関係者なの?』
だっておかしいじゃないか。
この屋敷に住んでいて、アクマを知っていて教団に報告するだとか。
そんな事するのは大体…。
「はい、教団の関係者もなにも、僕は教団のファインダーですから」
『ふ、ファインダー!?屋敷に住んでるただの使用人じゃなかったんだ!?』
驚きのあまり、玲子は普通に失礼な事を口走っていた。
キースは玲子の発した使用人という言葉に反応した。
「…使用人、ですか。僕、そんなにオーラありませんか…」
しゅーん、と沈んでいくキース。
玲子は慌てて否定しに入るが、何と言って否定すれば良いのか思い付かなかった。
『えっと…!そのっ。そうだ!入り込めてて違和感が無いから凄いなって思います、はい!』
とは言ってみたものの、明らかに今考えただろうというキースからの痛い視線が玲子に突き刺さる。
「…良いんです。どうせ教団にいても存在感は薄くて目立ちませんしね…。そんな事より」
うっすら涙を浮かべながらキースは話題を変えようと顔を上げた。
「お疲れでしょう?今晩はゆっくりとお休みになるといいですよ」
ぱっと話を変えられた玲子はただキースの言う事に頷くしかできなかった。
僕は見張りをしていますから、とキースは玲子を客室用の部屋に案内した。
キースは部屋のドアノブを捻り扉を開くと玲子を部屋に招いた。
どうやらここが今日借りる部屋らしい。
それにしてもさっきの案内の仕方といい、招き方といい、やっぱり使用人っぽい。
「それでは、ごゆっくり…」
『おやすみなさい』
キースはにこりと笑顔を向けるとぱたん、と静かにドアを閉めて出て行った。
玲子は借りた部屋のベッドに倒れ込むように横になり、顔を埋めた。
ひとりになり静寂が広がる。
静かな所になるとついつい考え事をしてしまう。
『(今頃、アレンと神田がマテールに着いた頃かな…)』
玲子は別々の任務になった仲間を思っていた。
今、自分は無傷。
今の所なにも起こっていない。
向こう、アレン達の方ではもうレベル2のアクマと遭遇してる頃だろうか。
だとしたら神田はお決まりの「見殺しにするぜ」発言をしてる頃かな。
アレンは初任務で、神田と組んで最悪って思ってるかもしれないな。
けど、それ以上に神田は頼りになるって実感するのかも知れない。
なんだかんだでアレンの事庇うからね、神田は。
良いところもあるんだけど。
でも、その前に。
『…怪我、しちゃうんだよね……アレン達…』
どうも先の事が分かっていると、考えられずにはいられなかった。
どうして一緒の任務にならなかったのだろう。
自分が一緒に行ったら、怪我なんかさせないのに。
そう思いながら俯せの格好で玲子は瞼を閉じる。
考えていた事は、瞼を閉じた時に一緒に消えていった。
疲れが出たのか、玲子はすぐに眠りについてしまったのだった。
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