story

□人の素顔は笑顔で隠れる
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神田が「何でだ?」と聞くのと、玲子がイノセンスを発動させたのはほぼ同時だった。



『―イノセンス発動、悪魔の眼(メデューサアイ)…―』



神田は目の前にいる玲子の眼がみるみるうちに紅く染まっていくのを驚きながら見ていた。


「それが、お前のイノセンスか…、……っ!?」


神田は玲子のイノセンスについて聞こうと近付こうとした。


だが、自分の身体は動こうとしない。


身体の変化に驚き、神田は玲子への質問が脳から掻き消されてしまった。


「くっ…!」


身体が自由にならない事に、神田の顔は段々険しくなっていく。


神田がこんなに驚くとは思ってなかった玲子はついつい笑ってしまった。


『(すごい険しい顔。驚きすぎて声になってないよ)』


クスリと玲子は笑ってしまった。


玲子は神田ががらにもなく焦っている姿に笑ってしまったのだが、神田は違うように受け取ったらしい。


「…(魔女、みてぇV)」


動けない獲物を見て喜ぶ姿はまるで魔女のよう。


そう感じたようだ。





「なんだこれ、身体が…」


『動かないでしょ?』


「!?」


さも当たり前のように言う玲子。


さらりと軽く言われたため、神田はまた暫く驚いていたが、すぐに冷静さを取り戻した。



これが、玲子のイノセンスの力なのだと理解した。



「…相手の動きを封じるだけじゃ使えねぇな。レベル2とかだったら破られちまうぜ、きっと」


動きを封じるだけではまるで役に立たない。


神田は心底つまらなさそうにしている。


だが、玲子は神田にトドメ(?)を刺した。


『これだけじゃないよ?他にも石化させたり灰化させたり、消滅させる事も出来るよ?』


「…………。」



全てはあたしの意のままに決めることができるよ、と玲子はにっこりと微笑んでそういった。


玲子の言葉と、あまりにも眩しく恐ろしい笑顔に神田はぞくりと身震いした。


「…それ、笑顔で言うか?普通」


『え、変?』


「いや恐ぇだろ!!」



神田は必死に先ほどの笑顔について言う。


とても良い笑顔であったのに、どこか影を漂わせている。


恐い、としか言いようがない。


身の危険を感じるものだった。


…本人はまるで意識していないようだったが。



『あははっ、大丈夫。ちゃんと使いこなせるようになったから』


神田を消したりなんかしないよ〜、とどこか某シスコン兄貴を思い浮かべさせるような口調で玲子は言うと、神田の金縛りを解いた。



呪縛から逃れた神田は一歩程だけ引き、含み笑いをする玲子を呆然と見ているのだった。







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