story

□肩を並べて
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「(…綺麗な人だなぁ)」


思わず見惚れてしまう笑顔だった。


その人の笑顔は柔らかくて、優しくて、温かくて。


全てを丸めて静めてしまう、そんな微笑み。


リナリーに言ったのだろうけど、こちらもつい「おかえり。」と言ってしまいそうになる。


ほわん、と空気が柔らかい。


暖かい人だな…。


強くて、逞しくて、それでいて優しい。


こういうのを心安まるというのだろうか。


ほんとに、いい人だなぁ。



とてもじゃないけどあの神田とか言う人とは大違いだ。


……人のこと差別してどっか行ってしまう失礼な人とは全っ然違いますね。





それにしても、勿体ない。


この人、玲子さんっていったかな。


玲子さん。


見た目からすると中国人か日本人だろうか。


黒髪がとても印象的で、その髪で隠れた瞳は薄茶色。


黒髪に映えてとても綺麗だ。


密着しなければ分からなかったあの香も、鼻腔について離れない。


良い印象しか受けなかった。


けど、一つだけ解らないことがある。



「(…どっちだろう)」



東洋人は幼く見えがちというけれど、とりあえず自分よりは年上だろう。


綺麗な顔立ち。


見れば見るほど勿体なく思う。


あんなに強いと感じたのに、いざ顔を見れば女性のような顔。


言っちゃ悪いがもっとカッコイイ顔をしているのだと思った。


切れ長だけど、優しい眼。


女性みたいな小顔でシャープな輪郭。


アレンは玲子をまじまじと見つめ始めた。




『…あのー…』


「(声もちょっと高いな)」




"男"にしては。




『あのー、アレンさん??』



ぼおっとしといたアレンに玲子は覗き込むようにして見つめ返した。



「えっ?あ、ハイ!?」



見つめ返され、かなり驚き赤面してしまうアレン。


玲子はこんなに驚かれるなんて思わなかった。



『あ、ごめんね。あたしの顔に何かついてる?』


「あ、いえ…」



玲子さんは顔に手を当てて恥ずかしそうな顔をしていた。


その仕草が可愛くてふっと笑みが零れてくる。





……ん?



あれ、今。



"あたし"って…言った?





「………え」



嘘だ……。



まさか、




「女性…?!」




よく見てみれば、中性的な顔立ちの中に、女性らしい部分も目立っていた。


そう、アレンは玲子を男だと思い込んでいたのだ。


アレンはあんなに強かったのがまさか女性だったという事に戸惑いを隠せなかった。


そしてつい声を出して言ってしまったのだった。


このあと、後悔という言葉が頭を埋め尽くした。




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