story

□現れる姿
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普通ならパリと聞いたら喜ぶ女性のほうが多いはず。


玲子の価値観は普通の女性より少しズレているようだ。


任務に興味を示すなんて、まるで野生児。



玲子はただ考え込んで、唸っている。


『パリ、ね…。頑張って!』


「…え?あ、おう。…ってそれだけ?」


『?何で?』


「ほら普通、"パリに行ったらお土産よろしく"とか」


玲子はこのラビの発言にため息をついた。


それはもう、盛大に。


『あのねラビ、あたしは任務中にそんな事頼む程、現を抜かしてるように見えるの?』


「そんな事、無いさ」


『あたしはそんな無責任な事を言うように見えるの?
任務中、中途半端な事をするとでも言うの?』


「いや…」


『そりゃ、任務中じゃなかったら頼んだかも知れないよ、パリだもん。けど、そこら辺は弁えてるつもり』



玲子は任された任務は真剣に取り組む。


それをラビも見ていたはずだ。


玲子の言葉を聞き、現を抜かしていたのは自分の方かとラビは気付いた。


玲子の方がちゃんとその辺りを弁えている。


年上なのに、ダメな自分。



「…すまん」


『謝らなくても…ιそんなに言い方キツかった?ごめんね?』



小さな子供をあやすよう声で謝る玲子。


これでは本当にどちらが年上か分からない。



「(ちゃんとしろ俺!)」



バチンと頬を叩くと痛みが走る。


予想外に、結構痛かった。



「っ…!!!」


『ラビ?!何やってんの自分を痛め付けて…』


「い、意気込みにちょっと…。やり過ぎた」


『……あんた……M?』


「ぶほっ!!!

ななななっ!何言ってんだ玲子!?」



玲子の口から出てくる事はない、というかその言葉さえ知らないであろうと思っていた言葉がラビの耳に留まる。



「お前ってそういう…っ!!」


『…?コムイさんが言ってたよ?ラビはMなんだーって』



くそコムイ!!!


影で、しかも玲子の前で何言ってんだ!!!



『…で、Mってなに?』



「ぎゃぁぁああぁぁあぁぁっ!!」


ラビにトドメの一言。


知らないで使ってたのかこの子は!!?



「なんでもないっ!たいした事じゃないから、なっ!!」


『ふーん?』



ラビは強制的にその話を中断したのだった。




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