story
□覚悟を決めて
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『けど、あの夢を見てから怖くなって…っ』
どんなに頑張ってたとしても、仲間がいなくなっては意味がない。
自分のせいで大切な仲間が消えてしまうのではないかと、すごく不安で、怖くなった。
『あたしのイノセンスは人にも有効で、制御し切れなかったらどうしょうって、不安で…ッ。
もし、制御出来なかったらコムイさん達を灰化させてしまうんじゃないかって…どうしようって…』
「玲子ちゃん…」
コムイは玲子の言葉を聞いて始めていなくなった理由を知った。
それは優しい理由だったとこの時分かった。
数カ月間、ずっと自分を責め続けていたんだ。
眠れ無くなるまでその夢にうなされて、体を壊して。
自分の力が強すぎるが為に不安になってしまったんだ。
己の力に恐れ、それが仲間である僕らに向かないように、君は避けていたのか。
そんな事、考えもしなかった。
僕はただ、戦闘に有利になることしか考えていなかった。
軽く考えていた自分に嫌気がさす。
彼女は仲間を思い、それが重過ぎるが故の行動だったのに、僕らと来たら君の事など関係なしに追い回し、苦しめた。
なんて愚かなのだろう。
ラビの言い分が正しかったのかもしれないと今更後悔した。
「ごめんね、玲子ちゃん。僕が中途半端だったから」
『違います…。あたしが悪いんです』
「違うよ。玲子ちゃんは悪くない。初めから僕がちゃんと君自身を見ていれば良かったんだ…僕が悪いんだよ」
『そんな事、無いです…』
お互いにそれは違うと言い合っていくと段々おかしくなってきた。
コムイと玲子は、思っていた事を全て話し、違うと否定しあうと笑い出してしまった。
自分が悪いのだと言い争うと、二人はこんな事なら早く話して置けば良かったと思った。
お互いの胸の内を知る事ができ、今やっと蟠りが解けた。
「本当にもっと早くこうしていれば良かったね…」
『そうですね…。でもあたしは今でも良かったと思います』
「どうしてだい?」
自分が教団からいなくなって、それを知ると教団の人達は心配してくれた。
自分を探して見つけだしてくれた。
多分、自分は一回外に出た方が良かったんだ。
ずっと教団にいたら今のようにコムイとは話せなかっただろうし、マイナスに考えてばかりいただろう。
蟠りを持ったままここに残り、信頼もされず、ただ一人でもがいていただろう。
あたしには一人で考える時間が必要だったのかもしれない。
遅かれ早かれ自分は一人にならなくてはならなかったのだ。
そして、決心して肝を据えなければならなかったんだ。
この人達と共に戦うという決心を。
手を差し延べられて漸くわかった。
この人達と一緒に戦おう、と。
そう決心したんだ。
『自分がどんなに心配されていたのか分かったから』
「…悪女だね、玲子ちゃん」
『ふふっ。いいじゃないですか』
「まったく…玲子ちゃんったら」
二人は穏やかな顔つきになっていき、沈んでいた玲子はすっかり元気になり笑顔を取り戻していた。
『(凄い…コムイマジックだ)』
玲子は冗談を考える余裕も出て来た。
気分は上々、言いたいことをはっきり伝え、余程すっきりしたのだろう。
コムイもまた、微笑んでいる。
「ところで玲子ちゃん、体はもう大丈夫かい?」
『あ、はい。ちゃんと動きます』
「…そっか、それなら良かった」
この時、コムイの眼鏡が怪しく光っていた。
玲子はそれに全く気付いていない。
「じゃあ早速だけど、ヘブ君の所に行こうか☆」
『………………ぇ』
わお、凄いぞコムイマジック。
今までの気分は台なしですぜ。
頭の良いコムイは、頭の切り替えも早いようだ。
玲子はコムイのあたまの切り替えの早さに感心しつつ、顔を引き攣らせた。
『…ヘブ君って、ヘブラスカさんの事ですよね…』
「うんそうだよー」
『で、ヘブラスカさんの所…に?』
「行ってもらうよー。君のイノセンスを見てもらわないとね」